『とりっくぉぁとりーと』

──『とりっくぉぁ とりーと』


──さあ、選ぶのです『いたずら』か『おもてなし』のどちらかを


 僕は考えあぐねいておりました。なぜなら⋯⋯。


「お帰りください」


──帰りません


「僕はヒキニートです。このドアを開けたくありません」


──ダメです


 僕はヒキニートなのです。買い出しの時以外はこのドアを開けたことがありませんし、開けたくもないのです。


 どんな奴がこんな悪質ないたずらをするのかと、ドアスコープを覗いて見ました。


 え?


──『とりっくぉぁとりーと』


 見れば、美しくも可愛らしい女性が立っていました。


 ヒキニートな僕にこんな女性の知り合いはおりませんし、訪ねて来る理由も見つかりません。

 僕は少し腹が立ってきました。僕の平穏なヒキニート生活を脅かすこの存在をどうしてくれましょうか?


 僕は選択しました。


「では、その両方を」


──ふふ かしこまりました


 いま、この女性ひと笑ったよね? むしろ嗤ったともとれる笑い方でしたよね?


〜♪(着信)


「⋯⋯誰だよ『わたし』って?」


 僕は着信拒否設定にしました。


〜♪


「⋯⋯くそっ! 壊れてんのか!?」


 着信拒否設定にした『わたし』からまたかかってきました。すぐにそれも着信拒否に設定します。


〜♪


 ⋯⋯。僕はスマホの画面も開かずに電源を落としました。もともと家電いえでんもありませんし、これでかかって来ることもない筈です。


〜♪(パソコンのメール着信音)


 まさか⋯⋯。くそ、こいつ! まぢか? 開いたメールには『わたし』の差出人の名前があります。内容には『愛してます』が文字数の限界まで書き込まれていて、添付された画像には、見覚えのあるドアが写っておりました。そしてそこにもメッセージがあります。


 『あなたのマリリコ』


 マリリコ。確かに見覚えがあります。そう、聞き覚えではなく、見覚えです。オンラインMMORPGで知り合ったアバターの名前です。彼女とは気が合うのでいつも一緒に攻略をしておりました。そしてつい先日、お互いにレベルが40になったタイミングで挙式を挙げたのです。

 挙式と言ってもゲーム上だけの話ですから、実際とは関係ありません。


 そのマリリコさんが彼女だというのでしょうか?


 僕はゲームを立ち上げて当のマリリコさんに確認することにしました。


「ふぁ!?」


 立ち上げると同時に彼女がスタンバっておりました。


『ドアを開けてください』


 ▶開ける

  開けない


 僕は⋯⋯。


──ガチャ⋯⋯


 彼女と一緒に引きこもることになりました。




        ─了─




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