『そのビスクドールは饒舌《しゃべ》らない』

 これはまだ誰にも言ったことがないのですが、実は僕、人の心と言いますか、思考?が読めるのです。


 読めると言うとテレキネシスなんかをイメージされるのことだと思われます。しかし、僕のは条件が厳しいために現実ネキだとは言い難いのです。と、言いますのは、右手を相手の頭に置かなければなりません。そうすることで、相手の思念が手からこちらの脳へ伝達されるような仕組なのです。


 なので、あまり使うことがなかったのですが⋯⋯。


 先日より数日間、僕の家で預かることになったターシャちゃん。ポーランドにいる叔父さんの奥さんの連れ子らしいのだが⋯⋯。


 可愛い♡


 外国人と言うだけでエキゾチックな雰囲気はあるのだが、髪はブロンドのストレートロングで、前髪は綺麗に切り揃えられている。服装も清楚でゴシックロリータ風のデザインのものを着ているのだが、やはり日本人とは骨格が違うのか、ビスクドールのような美しさを醸し出している。


「僕はこの家の長男で優也と言います」


 ⋯⋯。


 どうやら、この姪っ子ビスクドールは喋らないみたいですね。


「お兄ちゃん、この娘が例の子? 可愛いわねぇ♡」


 僕のふたつ下の妹だ。


「玲子、ターシャちゃんだ。おまえ、仮にも女なんだから面倒みてやれよ」

「仮じゃないし! セクハラだしモラハラだかんね!」


 パシッ!


「え⋯⋯」


 何が起こった? いや、単純にターシャちゃんの頭を撫でようとした妹の手が勢いよく叩かれたようだ。


「うげ! この子、めっちゃ睨んでくるんだけど? 私、無理かも!」

「え⋯⋯?」


 いや、そんなことはないだろ? と、僕も彼女の頭を撫でてみた。ほら、大丈──!?


 『触るな孺子こむすめめ、妾の御髪が穢れるわ! うむ、貴殿は赦そう。寛大な妾の恩赦に預かれる事に格別たる恩恵を感じるが良かろう。うむうむ、苦しゅうないぞ、あっ、もっと、もっと撫でてたもれ!?』


 誰!?


 僕の右手から流れ込んで来た彼女の思念は、西洋人のそれではなかった。

 しかし僕の勘違いと言う可能性もある。もう一度だけ──!?


『はわわわ〜♡ お兄さまの手が私の頭に⋯⋯たまんにゃいわあん♡』


 だから誰?


 そして物欲しそうな目で見んのやめて!? と言いつつ。


『ぐえへへへへ! いい、いいぞぉ? もっと、もおっとだぁ! しかし俺も限界だ! お前の○○○ピー○○○ピーさせろ!』


 ⋯⋯。


「玲子、安心しろ? コイツはただの厨二病だ!」

「デュフフコポォ オウフドプフォ フォカヌポウ!」

「で、今なんてったの?」

「笑っただけ?」

「無理!」





       ─了─





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