1分で読める創作小説2025

かごのぼっち

『恋なんて』

 彼は言った。


「恋なんてしない」


 彼は幼馴染みの祐樹。高校までずっと一緒だけど、色恋の噂は聞かない。どんなに想っていても、彼は私を見てくれない。


 私はずっと彼を見てきた。


 思いきって「恋とかしないの?」って聞いてみた結果がこれだ。


 ガン!


 呆れた私は彼の椅子を蹴飛ばした。


「⋯⋯」


 チラリと見るも、相手にしてくれない。


 彼は背が伸びて男らしくなったけど、私だって女らしくなったのだ。女に興味がないわけないよね?


「えい!」


 私は彼にヘッドロックをかけた。


「うわあっ!?」


 私だってまんざらでもないでしょっ!?


「なにすんだよ、春香!」


「恋くらいしろよ!」


「んなもん、今さらしねえよ!」


 腕の力を強くする。


「春香、死ぬからっ!」


 力尽くで恋をしろと言っても無理なのはわかっている。


「わからず屋!」


 教室を出た。何やってんだろ、私?


「祐樹おまえ、春香の気持ち知っててやってんだろ?」


「⋯⋯ああ」


 なんだって!?


「じゃあ、春香のこと好きじゃないわけ?」


 そこんとこどうなんだ、祐樹?


「⋯⋯」


 だんまりか!


「返事がねえなら俺、春香のこと誘ったって文句ねえよな!?」


 ガタン!


「隆史てめぇ、春香に手ぇだしたら殺す!」


 っ!?


「んだよそれ! じゃあ、はやく彼女にしろよ!」


 そうだ、してやれよ!!


「おい春香、祐樹がおまえのこと─」


 ドカッ!


「─わ、祐樹あぶねーから蹴んなよ!」


「春香、俺ぜってー恋なんかしねーかんな!」


 うっ。


 面と向かって言われるとこたえる。

 目からジュワって汁が出てくる。

 く、祐樹なんかに涙なんて見せたくない、だって悔しいもん!!


「祐樹のばかあっ!!」


 逃げた、全力疾走で!

 次の授業? そんなの知らない!


 とにかくひとりに⋯⋯


「独りになりたいってんだろ! 追いかけてくんな、バカ祐樹!!」


 私なんか追いかけて、どうしようというのか。


 そんな祐樹にまわし蹴り!!


 バシ!


「なっ!?」


 祐樹のくせにまわし蹴りを受け止めるとは!


「あっぶね! おまえ、こういうのやめろよ!」


「あんたに関係ない!」


「大ありだ! ドキドキするんだよ!」


「へ?」


「パンツ丸見えなんだよ、おまえ⋯⋯さっきも胸押し付けてくるし!」


「だってあんた恋なんてしないって─」


「─もうしてるから! 他の恋なんかしねえってんだ! わかったか、この鈍感女!」


「わかんない!」


 むぎゅ!?


「これでもか?」


「わ、わかんないから、もっかい?」


「鈍感女め」


 ん。





       ─了─

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