第3話 事件の匂い
次の日。学校が休みだった俺と美由紀は街に買い物に来ていた。
何でも買いたい物があるってことで地元から電車で30分かけてやって来た。
俺は美由紀の荷物持ち。
まあ、俺には荷物持ちでも重い物を持つことによって自然とトレーニングになるからいいけどな。
俺の父親は国際指名手配犯の殺し屋ダークナイト。母親は世界を股にかける結婚詐欺師の礼美。
その間に奇跡的に生まれた俺は小さい頃から父親に殺しの技術を教わって育った。
小等3年生の時から日本に定住することになったがそれは俺だけ。
父親も母親も一緒に住んでいない。
そして訳ありの美由紀と一緒に住んでる。
詳しくは最初の「ダーククラブ活動記録1」を読んでくれ。
ダーククラブを設立したのも俺。
ダーククラブの部員になる条件は「人を殺したことがある者」だ。
よって俺を始め部員の原野美由紀、吉田拓也、雅吾郎、広江武は人殺しだ。
でも単なる殺人鬼集団じゃないぜ。
人を殺すのにはちゃんと理由がある。
世の中さ、腐っている奴らがいるだろう?
人に迷惑かけて甘い蜜を吸っている奴らとかあんたたちの周りにはいないか?
俺たちはそんな奴らを始末している。
まあ、積極的に殺しまではやらないけどな……たぶん。
因縁つけられて喧嘩することは日常茶飯事だから時々やり過ぎちまうこともある。
そんな時に頼りになるのが「木村一郎」って人物だ。
木村さんは闇社会専用のバーのマスターで俺の父さんの親友でもある。
日本に住んでる俺の面倒を見てくれている。
木村さんも「殺し屋ピエロ」と呼ばれる殺し屋だ。
俺は週に何回か木村さんのバーでバイトをしている。
そしてやり過ぎちまった時は木村さんが後始末してくれる。
だから俺は木村さんに頭が上がらない。
今日も夜は木村さんのバーでバイトの予定だ。
「あ、あったあった。良かった最後の一個だったみたい」
美由紀はお洒落な化粧品店に入ると目当ての物を見つけたみたいだ。
それはあるブランドの香水だ。
へえ、美由紀が香水に興味があったなんて初めて知ったぜ。
家ではほとんど化粧はしていない。
出かける時に薄く化粧をするぐらいだ。
それだけでも美由紀の美貌は際立つ。
さらに中等生とは思えないほど成長した胸とお尻は街に出ると男たちの視線が自然と集まる。
こういってはなんだが俺も男としては整った顔をしている。
母親の礼美の美貌を受け継いだからだ。
だから周囲からは美男美女のカップルにしか見えないだろう。
もちろんそれを面白くなく思う方々もいて因縁つけられて喧嘩って流れになることも少なくない。
どうして世の中の連中は顔がいいと喧嘩が弱いって思う連中が多いのかね。
「美由紀。お前が香水に興味あるとは思ってなかったよ」
店を出て俺は美由紀に声をかける。
「違うってマサくん。これは誕生日プレゼント用だって」
「誕生日プレゼント? 誰の?」
「昨日話した神田萌ちゃんよ。あの子このブランドに興味があるって前に言ってたからこれ渡して悩みを打ち明けてくれたらなあと思って」
「ああ、そういうことか」
美由紀は他に洋服や雑貨を買うと全部俺に持たせる。
まったく美由紀も容赦ないぜ。
「あれ? 萌ちゃんだ」
美由紀が人混みの中反対側の通りを指差す。
俺が美由紀の指差す方向を見ると確かに神田萌がいる。
そして萌は一人ではなかった。
萌と一緒にいる人物に見覚えがある。
「あれ、一緒にいるのって社会科の片野先生じゃね?」
俺がそう言うと美由紀も頷く。
「ホントだ。でもなんで萌ちゃんと片野先生が一緒にいるんだろ?」
「偶然会ったのかな」
俺たちがなおも二人を観察しているとどうも様子がおかしい。
片野はニヤニヤしながら萌の肩を組んで歩き出した。
萌の方は暗い顔で怯えている様子だ。
「おい。後をつけてみようぜ」
俺は美由紀に小声で言って二人の後をつけていった。
すると二人は人混みを離れてラブホテルが立ち並ぶ一角に歩いて行く。
まさか二人って……。
そして予想通り片野と萌はラブホテルの一つに入って行った。
「ちょっと! どういうこと?」
美由紀は自分の目で見た光景が信じられないようだ。
「あの二人付き合ってんのか?」
「そんな話萌ちゃんから聞いたことないわ。それに萌ちゃんなんかおどおどした暗い顔してたし。恋人同士ならもっと笑顔を見せてもいいんじゃない?」
「う~ん。そうかもしれないな」
「もしかして何か片野先生に脅されているのかも」
「それで体を要求されたってことか?」
「絶対萌ちゃんはこんなことする子じゃないもの。絶対何か訳があるのよ」
「それじゃあ。少し調べてみるか。事件の匂いがするぜ」
俺の感が告げていた。これはダーククラブの出番がありそうだと。
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