勇者たるもの・2

 やっばあぁぁぁ!

 思わずカッとなってひっぱたいて、文句を言ってしまった。


 考えるまでもなく相手は勇者の妹……1人で空を飛べるような存在だ。

 奴隷以上の存在ではない俺が敵う相手ではない。

 メリー、お、俺の味方をしてくれよな……

 ユミナがキレたら助けてくれよ?


 と大慌てだが、ユミナはあまり怒った様子はない。

「私よりマシな勇者はいっぱいいると……?」

 むしろ、茫然とした様子でつぶやくように自問自答している。

『うーん、まあ、おまえより強い人類はいっぱいいるでちね』

 全員、アタチの相手ではないでちが、とメリーがどや顔を決めている。

 分かっているよ、おまえはそれが言いたいだけなんだよな。


『おまえは人間の中では見た目が良いのと、勇者の妹ということで色々ちやほやされていたでちよ』

「そ、そんな……」

 兄を倒したメリーに色々指摘されている。

 これは悔しいだろうなぁ……。


「私は、驕っていたというのですか……」

 本人は大ショックというような様子でぶつぶつとつぶやいている。

 見ている分に気の毒なほどだが、間違いなく驕っていただろうから、これについては同情のしようがない。

 というか、勇者法なんて法律自体、なくした方がいいと思うぞ。



「……なるほど、だから、エデン・ミラーシュが選ばれたわけですね」

 しばらくすると、何か別の答えに達したようである。

 うん? どういうこと?

「私の回りにはちやほやする者しかいなかった……。そうではなく、真実を知る者としてエデンがいたと」

「いや、そういうわけではないと思うんですが……」

 何か変な方向に理由づけをしはじめたぞ。

 勇者の家族計画を含めて、結構思い込みが強いんじゃないだろうか、彼女。



「ですが、私は勇者ユークスの妹として、人類を守らなければいけない! ならば、この一ヶ月、修行をして、今度こそ勇者の継承者としてふさわしい存在となり、戻ってまいりましょう!」

「えぇぇぇ……」

 いや、修行するのはいいんだけど、別に戻ってこなくていいから。

 可愛いけれど、思い込み強すぎて、一緒にいるだけで疲れそうだ。


『フッフッフ、ならば戻ってきた時、アタチがおまえの実力をちっかりと判定してやるでちよ』

 何故かメリーがユミナのノリに付き合っているが、ユミナは当然兄の仇に対して厳しい視線を向けている。


「エデン・ミラーシュ。私は貴方への認識を改めました。確かに勇者とは別の形で人類のために遣わされた存在なのでしょう」

 いや、そういうのじゃないから。

 あまり見下されるのも困るが、変な形で評価されるのはもっと困る。

「私は貴方にふさわしい存在となって戻ってきます。一ヶ月後にまたお会いしましょう! それまで、おさらば!」

 一方的に宣言をしまくって、彼女はどこかに飛んでいった。


 しかし、修行って、どこでやるつもりなんだろう?

『さて、この世界には魔王様しか知らないような摩訶不思議な場所が一杯あるでちからね。ユークスもどこかで修行していたはずですち』

「でも、ユークスと同じだったらメリーには勝てないんだろ?」


 まあ、どちらにしても目の前の脅威はいなくなった。

 いや、そう思うのは早計か。


「勇者の妹がいなくなったということは、エデンに売り込むチャンスが……」

 という、ひそひそとした本音が聞こえてくる。

 先ほどまで気兼ねなく話をしていた村人が、一転して油断できない存在になってしまったのかもしれない。

 俺の未来は、果たしてどうなっているのか……

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