第11話 王子旅にでる、まだ見ぬ薬を求めて
俺の名は、ユリウス、ロゼリア王国の王子だ。
今、俺はまだ早朝の人通りもまばらな通りを、足早に王都の門に向かっていた。
「急がなければ」
城壁をこっそり抜け、用意しておいた馬車に乗り込む。同行するのは、長年俺の護衛を務めてくれている老騎士、サー・ガブリエルだけだ。
「ユリウス様、本当にこのまま旅に出られるのですか? 国王陛下には、何もおっしゃらずに……」
ガブリエルが心配そうに尋ねる。そう、俺は、父上と母上に内緒で城を出てきた。俺は遠ざかる城の灯りをじっと見つめながら、静かに答えた。
「ガブリエル。俺はもう待てないんだ。いちいち父上の承諾を待っていたら、ミーナは死んでしまう。」
「ですが……」
「まして、あの話を聞いてしまってはな」
「あの話」とは、最近王都で密かに噂されている、森の奥に住むという賢者が「万能薬」を作っていると言う噂のことだ。
最初は誰も信じていなかったが、その賢者の薬で病が治ったという証言が、少しずつ俺の耳にも入ってきていた。
「万能薬を作ると言う賢者様が本当にいるかどうかもわかりません。あまりに危険すぎます」
「わかっている。だが、もし、本当に万能薬が作れるのなら、ミーナの病もきっと……」
ミーナは10歳になる、俺のたった一人の妹だ。近頃、急に病に伏せっていた。原因はは分からず、日に日に弱っていくミーナを前、俺は無力さを感じずにはいられなかった。
「ミーナは俺のたった一人の妹なんだ。あいつの笑顔をもう一度見るためなら、どんな危険も厭わない」
ガブリエルは黙って聞いていたが、やがて
「……承知いたしました。では、必ずお守りいたします。祈りましょう、賢者様がいらっしゃるとそして、万能薬を手に入れましょう。」
「ああ。ガブリエル、頼むぞ。俺は絶対に、ミーナの薬を手に入れて、帰ってくる」
俺はもう一度、遠ざかる城に目を向けた。そこにいる、愛する妹の笑顔を胸に刻み、俺は未知なる旅へと出発したのだった。
「ミーナ、待ってろよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます