第9話 オオカミさんはお友達
「わぁ、この薬草もいい感じ!」
森の奥深くで、私は今日もせっせと薬草を摘んでいる、リリです。
こんにちは。
成長を早める魔法をかけたり。土に栄養を与える魔法がつかえたり、生活魔法って便利だなぁと改めて思うんだよ。
この魔法が不遇だなんて、大人の考えることはよくわからないね。
「グルルルル」
薬草を採ってた時に、どこからか苦しそうな唸り声が聞こえてきたんだ。急いで声のする方へ駆けつけてみたら、そこにいたのは、信じられないほど大きな狼さんだった。銀色の毛並みに、宝石みたいに輝く青い瞳。
「きれい〜!」
そのオオカミさんの片足が、大きな罠に挟まってる。鋭い牙が食い込んで、血がにじんでる。すごく、痛そう。
「大丈夫!?すぐに外して・・」
思わず駆け寄ろうとしたら、「グルルルル!」って唸り声を上げて、牙を剥かれた。
「あ、ごめんね。怒ってるよね」
「痛いよね。でも、大丈夫、わたしはあなたの味方だよ、大丈夫だよ」
フェンリルはまだ警戒してるけど、私の声にちょっとだけ唸り声を緩めてくれた。罠は頑丈な鉄製で、素手じゃ全然開けられそうにない。
「ちょっと我慢してね、『メタル・ヒーリング』」
私は罠の鉄に手をかざすと、罠の金属がじわじわと熱くなっていく。
「熱くなれ~、柔らかくなれ~」
罠の鉄が赤く染まって、ジューって音を立てて湯気が上がった。オオカミさんは熱さにびっくりして身をよじらせるけど、私は優しく話しかけ続けた。
「大丈夫、もう少しだよ。痛いの、すぐ終わるからね。頑張ってね」
熱で柔らかくなった罠を、「聖剣アキサザメ」で少しずつ広げて。
「よいっしょ!」
そして、ついに「カシャン!」って音がして、罠が完全に開いてオオカミさんの足が自由になった。
「やったー!」
『いいのだが、拙者の使い方に一言抗議を申し上げたい』
なんか言っている、アキサザメは、スルーしとく。それどころじゃないからね。
喜んでいるオオカミさんの足は、深い傷を負っている、傷口からまだ血が流れている。すごく痛そうにしてる。
「大変だ、血がすごく出てる・・・」
急いでアイテムボックスから薬草を取り出して、傷口に丁寧に塗ってあげる。そして「魔力を込めて。ヒーリング・ウォーター!」
オオカミさんの傷口はみるみるうちに塞がって、血も止まったよ。オオカミさんは、信じられないような物を見るように、自分の足を見つめて、それから私の方を見てきた。
「くぅ〜〜ん」
オオカミさんの舌が、私の顔をそっと舐めた。警戒心じゃなくて、感謝と親愛の気持ちが伝わってくる。くすぐったくて、嬉しかった。
「わ、くすぐったい!」
私はオオカミさんにぎゅっと抱きついて頭を撫でてあげた。
「もう大丈夫だよ。これからは森で会ったら、お友達だね!」
「アオーーーーーーン」
オオカミさんは嬉しそうに一声鳴いて、私の周りをくるっと回ると、森の奥へと走り去っていった。私は手を振って、オオカミさんを見送った。
その日の夜、ゴードンが夕食を作っていると、小屋の前にオオカミさんが新鮮な鹿肉を口に咥えて現れたんだ。お礼のつもりかな?
「ありがとね」
よしよし、してあげたよ。
ゴードンさんが
「お前……まさか、あれを助けたのか?」
って、驚きと呆れが混じった声で聞いてきた。
「うん! 私のお友達になったんだよ!オオカミさんだよ」
紹介してあげたよ。
「いや、まぁ、なんというか。」
ゴードンさんは頭を抱えていたけど、どうしたんだろう?。
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