クラスの清楚美人が多分俺のためにギャルになろうとしている

深海さん

清楚な彼女と俺の妄想

 俺の名前は神谷イツキ。高校二年生。ごく普通のオタク男子だ。

 友達は少なめ、放課後は漫画かゲーム。恋愛なんて縁遠い――はずだった。

「なあイツキ。お前、どんな子がタイプなん?」

 昼休み、同じオタク友達の田中がニヤニヤしながら聞いてきた。


「は? いきなり何の話」

「いやー、最近カップル増えてきただろ? ほら、夏休み前だし」


 俺はため息をつきつつも、ふと口をついて出てしまった。

「……もしクラスに“オタクに優しいギャル”がいたら、絶対好きになるわ」


「お、イツキ珍しく即答やん」

「いや、そんな存在いるわけねーだろ。漫画かラブコメの中だけだって」

 笑ってごまかしたけれど、確かに本心だった。


 ――でも、もしもだ。

 もしクラスに、「オタクに優しいギャル」がいたら。

 いやもう絶対、秒速で恋に落ちるだろ俺。


 たとえば――昼休みに弁当を一緒に食べながら、

「そのアニメ、私も好き~! 今度一緒に映画見よ?」

 とか言ってくれるギャルがいたら?

 死ぬ。即死。恋の病で余裕の即死。


 妄想でニヤけかけたところに、

「イツキくん、昨日のノート……写す?」

 澄んだ声が隣から降ってきた。


 俺の隣の席――天宮ユイ。

 黒髪ロングに白いカーディガン。学年でも評判の清楚美人。

 俺とは小中が一緒で、でも最近はなんとなく距離を感じていた。


「……あ、ありがと」

 ノートを受け取りながら、ふと違和感を覚える。


(なんか……今のユイ、少し雰囲気違った?)


 仕草が柔らかいというか、声のトーンが少し明るいというか。

 いや、俺の気のせいかもしれない。

 でも、ほんのわずかな変化に敏感な俺のアンテナは、確かに反応していた。


(……いや、考えすぎだろ。ユイはユイ。昔から清楚でしっかり者の同級生。それ以上でも以下でも……)


 そう思いながらも、胸の奥はざわついていた。


 俺はまた妄想する。

 もし、この変化が俺に向けられているものだったら――。


 ……いやいや。あり得ない。

 そんなラブコメみたいなこと俺に起きるはずがない。

 まず第一に少し明るく感じただけじゃないか。

 俺はまたキモい妄想をしてしまったと1人、反省をしていた。

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