第33話 炎の誓い ― 第三十三話「闇に飲まれる」

黒木龍一郎の口元がわずかに歪む。

ラファエル・シュナイダーが掲げた手から、漆黒の渦が広がり、空間そのものを呑み込むような圧が押し寄せていた。


「――これが、闇の極致ダークアームだ」

ラファエルの声は低く、残酷に響きわたる。


巨大な影の腕が伸び、仲間たちへと襲いかかる。

澪が悲鳴をあげ、隼人が剣を振るうが、闇の腕はその刃を飲み込み、無力化していく。


悠真が炎を放ち、氷河が氷の壁を築き、雷太が雷を落とす。

だが全て、飲まれて消えた。


「……光がいなければ、俺たちは虫けら以下か」

黒木は闇の奔流を見つめながら、心の奥底で呻く。

かつて己が誇った闇の力。その完全上位互換を前に、無力感が胸を締めつける。


(――一度、この闇に呑まれて……出直すしかない)

己が編み出したダーク・アーム。この闇に呑まれた者がどうなるのか、彼は熟知していた。


黒木は歯を食いしばり、叫んだ。

「――あの場所へ集合だ!!」


「黒木!? 何を――」悠真が振り返るより早く、闇の腕が一行を捕らえた。


「ははははは! 終わりだ!!」

ラファエルは高らかに勝利を宣言する。

「これで世界は我が掌中にある! 愚かな光も、希望も……すべて闇に沈めてやる!」


仲間たちは次々に呑み込まれていった。

莉奈が最後に振り返り、氷河に手を伸ばす。

「……お兄ちゃん、氷河くん……っ!」


氷河がその手をしっかりと握り返した瞬間――

視界は漆黒に閉ざされ、世界は消え去った。


ラファエルは、静まり返った空間にひとり立ち尽くす。

やがて、満足げに吐き捨てる。


「……光も、炎も、氷も、雷も……すべて呑み込んだ。……勝者は、このラファエル・シュナイダーただひとりだ!」

ラファエルの首に架かる銀のペンダントが、まるで意思があるように光り輝いていた。


黒い外套が翻り、影は虚空に溶けていく。

誰一人、生き残ってはいない。


……そう、彼は信じていた。

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