【四話 湖の貴婦人①】
小さな小さな子どもたち
夜の『湖の森』に行ってはいけないよ
行ってしまえば湖の貴婦人【■■■■■】に
『湖の城』へ連れ去られてしまうから
連れ去られちゃった子どもたちは
二度と外には出られない
泡になって消えてなくなっちゃうまでずーっとね!
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
「(….不味い、です……痛みで…意識が…………)」
「ランスロット!?ランスロット!!嗚呼、早く『湖の城』で癒やさなくてわ!
嫌、消えないで───私の愛しい坊や……!」
湖の水から作られた渦に飲み込まれた二人。夜の森は元の静寂に戻った。
……ウーサー(七歳三ヶ月)、謎の美女精霊に誘拐され絶賛大ピンチに陥っていた。
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
───少し前、今夜は珍しく月が出ていたのと久しぶりにちょっと身体の調子が良かったので、ウーサーはこっそり城からこっそり抜け出し、【あの仔達】の気配を探しているついでに黒くてバッチイ何かを捕まえて丸めて袋に入れて詰めながら城の近くにあるいつも洗濯で利用している湖に向かい森を歩いていた。
「んぬ?」
探っている途中、白くて小さな丸いものがふよふよとウーサーに近寄り、何かを訴えるように彼の周りをグルグル回る。
「どうしたのですか?私に何か言いたいことがあるのですか?」
白いのが何かを訴えているのに気付いたウーサーが問うと、白いのはウーサーに着いてきてと言うように森の奥へと進んで行った。
「うむむ、付いてきて欲しいという事ですか(あの先はいつも行っている湖しか無いはずですが…)」
と、ウーサーは白いのの怪しい誘いに特に警戒もせず後について行ってしまう。
ふよふよと進んでいく白いのに着いて歩き暫くすると、大きな森林がポッカリと開けた所に出た。その先にあったのは大きな湖だった。いつもは暗くて殆視えなかったが、今夜は月の明かりで水の底が見える程青く透明で昼間とはまた違う美しさが其処にあったのだが…
「わぁ……」
思わずウーサーは感嘆の声を上げていた。なんと湖には色とりどりの光を放つ小さな妖精達が集まり、水の上を滑るように飛びながら遊んでいた。そしてその姿はとても幻想的て楽しそうな光景だった。
暫くその光景を堪能していると、白いのがウーサーの目の前にまでやって来てまた何かを訴えるように上下に揺れる。
「ちょっと待って下さいね。アナタが何を言いたいのか分かるように
と、ウーサーは白いのに優しく触れた。そのまま数秒待つとウーサーの頭の中に自分より幼い子供の声が語りかけてくる声が聞こえてくる。
〚おかあさまを、どうか…たすけてあげて!〛
「〚おかあさま〛とは、アナタの母親のことですか?助けて欲しいとは一体どういう事ですか?」
ウーサーが白いのに〚おかあさま〛の事を問うた時だった。
「───ランスロット?」
湖の底から美しい女性の声が聞こえた。声は誰かの名を呼ぶと同時、浅瀬に石を投げ入れてもいないのに小さな波紋が現れ徐々に広がっていく。
「この気配は…」
城でも何回か似た覚えのある気配にウーサーは少し身構える。波紋が一m程広がった所で波が止まりその真中に湖と同じ色の瞳と長い髪を緩く結った美女が音もなく立っていた。
よく視ると彼女の周りに、彼女を守るかの様に白いのと同じモノが何十個もフヨフヨと浮かんでいる。
一見、人間の絶世の美女ではあるが、気配と【中】が普通の人間とは違うと見抜いていたウーサーは冷静だった。
「私が訓練に行っている間にいつの間にか精霊さんが移り住んでいたのですね」
実は前は何もいなかった森や川そして湖に妖精や精霊達がいつの間にか住んでいた、という減少はこの
何故なら【アヴァロン】の瘴気と人間の起こす戦争の戦渦によって住処を失い、新たな穢れのない清い場を探し見つけ其処に移り住む幻想の住人が後を絶たないからだ。
彼女達もその内の被害者でここに移り住んだのだろう……と思っていたんだけど、
「(この精霊さんの周りには人間の恐怖や怒りの念が異常なくらい纏わり付いていますね。それ以外にですが微かに憐れみ?いえ、これは……?)」
微かに視えたそれが気になりウーサーがもう少し彼女の【中】を視ようとした時だった。
〚おかあさま!〛
「え!?」
白いのが精霊の方に飛んで行ってしまった。
「〚おかあさま〛とは彼女のことだったのですか。…ですが」
精霊の周りを白いのがウーサーの時と同じ様にグルグルと回る。
しかし彼女は白いのを無視しているのか、それとも白いのが視えていないのかの様にただウーサーだけしか見ていなかった。
「ランスロット……」
精霊がまたその名を言うとピクリと白いのが大きく反応し、ウーサーは「ランスロット」ではないと言うように一層激しく彼女の周りを主張し回るが、やはり彼女は白いのを振り払うどころか視線一つも向けることはなかった。
白いののその哀れな姿を見てウーサーは考え込んだ。
「……(あの纏わり付いていいるもの以外で他に何かが原因で狂気に堕ちましたか…。あんなに眼が濁っていはあの子の姿が視えないのも無理はありません。可哀想に……)」
確かに精霊の眼には光が宿っておらず色が暗く虚ろで淀んでいた。
それを知っていても一生懸命に自分に気付いてもらおうと、精霊の周りを飛び回り続ける白いのの姿を見て憐れむウーサーだったが……
「嗚呼!やっと見つけた、ランスロット!」
「にゅっ!?」
白いのに気を取られいつの間にか精霊に目の前まで近づかれ、そのまま思いっきり抱きしめられてしまっていた。ウーサーは慌てて精霊から離れようとしながら彼女に自分は「ランスロット」ではないと否定した。
「あの!申し訳ありませんが人違いです!私は「ランスロット」さんではありません!ウーサーです!」
「何を言っているの?貴方はランスロットよ。私が間違える筈ないわ」
「いえ、思いっきり間違えてますよ!「ランスロット」さんは───」
「だって貴方のその暖かくて優しい【色】は本物だもの」
「はい?(【色】が同じです?おかしいです。私の【色】はあの子のものとは全くの別もの。何故同じ色などと……………ああ!)」
ウーサーは思い出した、そしてやらかした。
白いのが何を言っているのか分からないから、分かるように自分を
その時に少しだけ白いのと同調し【色】が付いてしまった事を!!
「(これですかーーー!!)」
これは不味い!まさかの
───ズギッ!!
「かはっ!?(これはっ!?)」
「ランスロット!?」
ボタボタとウーサーの口から血が溢れ出て、精霊の美しい髪とドレスを赤く染めてしまう。
「ゴホッゴホッ!(こんな時にっ、最近
「ランスロット!?ランスロット!!嗚呼、早く『湖の城』で癒やさなくてわ!
嫌、消えないで───私の愛しい坊や……!」
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