第5話 ライバル
「とりあえず、帰る前に何か食べようぜ!」
「僕はうどんかな」
「俺はどうしようかな。」
俺達は大学の食堂に来たのだが課題提出を終えた他の男子が食堂に集まっており食券機に列ができてしまっていたのでメニューを見ながら列がなくなるのを待っていた。
「私はゆうと同じのでいいわ!」
俺がメニューを見ていると、隣から萌絵が顔を出しながらメニューを見ていた。
「萌絵!?もう大丈夫なの?」
「うん♡心配かけてごめんね♪」
それにしたって運ばれてから5分も経ってない気がするのだが。
「流石番犬だな!」
「回復力が人間のそれじゃないね。」
「萌絵は講義とか出なくていいの?」
「忘れたの?私はここに名指しで入学してくれと言われた才女よ?融通は効くわよ。男子は昼まで大学内で待機でしょ?私も昼から一緒に帰るわ。」
「そっか。それじゃとりあえず席を確保しよっか」
萌絵は高校卒業前に様々な大学から声をかけて貰い大学に来てくれと誘われていた程の頭の良さでこの大学ではVIP待遇だったのだ。
ただ萌絵だったらもっと上の大学選べたはずなのだが俺達と同じ大学を選んだのは少し勿体ないと思った。
食券の列が少なくなったので食券を買い席で呼ばれるのを待っていると一人の女性が席に来た。
「片桐様〜♡ごきげんようですわ♪」
「チッ・・ウラかよ。」
「あ、麗さん。こんにちは。」
俺達の所に来たのは
麗さんはタケの親戚で麗さんの親がグループの重役とのことだ。
タケと違って気さくな人で話しやすい。
「武則が片桐様に失礼なことをしたみたいで...この麗!代わりに謝罪致しますわ。」
「麗さんが謝ることじゃないよ。それにタケも悪気があった訳じゃなさそうだし気にしないで」
「あぁん♡なんて優しい片桐様なのでしょうか♡素敵ですわ♡」
「・・・おいウラ!・・・食堂では静にしろよ」
「あら?チワワもいたのですね♪まったく気が付きませんでしたわ♪」
「あ?その歳で盲目か?眼科行けよ。」
「眼中にも無かったと言っているのですよ?理解できませんでしたか?チ・ワ・ワ・さ・ん?」
「チワワなめんなよ?喉元噛みちぎるぞ?」
「怖いですわ片桐さま〜♡」
「ゆうにくっつくんじゃねー!」
萌絵と麗さんは基本こんな感じで言葉は悪いが仲は良い。
それも西園寺グループの作ったショッピングモールは元々商店街があった場所に作ったのだが、商店街のお店と家をモール内に残してそのまま営業しており、その商店街は昔からうちの商店街とはライバル関係で、よくイベントごとをしておりお互いに切磋琢磨していたのだが、麗さんの家がその商店街を管理する様になってからは商店街同士は仲良くしているのだが、萌絵と麗さんがライバル同士になってしまいこの様な関係になっている。ちなみにその商店街は高齢化が進んでいたのだが西園寺グループが参入したことにより、新たに商店街内に若い人が移住とお店を出したりとして賑わいが戻り、昔から居た人達も喜んでいるらしい。
「
「いいですよ。席も空いてますし。」
「・・・ゆうが許可したなら許してやる。」
「もう喧嘩終わりか?」
「見てて楽しいのに残念。」
智輝とヒロにとっては二人のやり取りは娯楽の一部の様だ。
食事をしながら今度行われるイベントについて麗さんと話をしていた。
「そういえば、今年は久しぶりに商店街のスポーツ対戦があるんだよね?」
「そうですわね♪商店街の皆さんも楽しみにしていますわ。」
「私とモカ姉がいれば無双よ!」
確かに萌絵も凄まじい運動神経の持ち主なのだが、モカ姉はさらにそれを越えた運動神経の持ち主で、過去に子供が遊んで屋根に乗ってしまったボールを屋根に垂直跳びで乗り取ってあげたり、商店街内で原付バイクによるひったくりがあった時も、芽が育ちすぎて廃棄する予定だったジャガイモを投げてヘルメットを破壊しながら犯人を止めたこともあった。
「確かにあなたのお姉さんは脅威ですが、今回はそう簡単には行かないですわよ!」
「今回のスポーツ対決は貴女方が理不尽なまでにめちゃくちゃなので、そちらの会長さんと話し合い年齢、運動神経関係なく皆が楽しめる競技にしましたの♪」
「それは楽しみかも、内容はなんですか?」
「すみません。片桐様でもまだ教えることはできませんの。ですが!楽しみにしてくださいまし♡」
「そっか、ちなみに俺も参加できる競技なの?」
「安心してください。できますわよ。」
普段のスポーツ対決は怪我人必至な為敬遠していたが参加できそうで良かった。
その後食事を済まし、新たな課題とオンライン授業の日程表を貰って帰宅することにした。
他の男子生徒もぞろぞろと帰り出しそれに続いて俺達も外に出た。萌絵も一緒だ。
「さてと、帰りますか。」
「だな。さっさと課題を終わらせたいしな。」
「だね。今日の夜は清隆さんとこで集まるんでしょ?」
「そうだね。週1の楽しみだしね。」
「残念だったな!番犬はお留守番だ!」
「ぐぬぬ。」
今日は毎週末の金曜日に智輝の家の近くにある居酒屋で集まる日だ。
俺達は電車に乗り、地元に戻りそれぞれ帰宅した。
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