Sランクパーティーを追放された少年、最強の付与魔法師なり 〜ただの『応援係』だと侮られていたけど、実は声に付与魔法を乗せて仲間全員を強化していたのを、あいつらは知らない〜
第12話 付与魔法師、徐々に周囲から注目され始める
第12話 付与魔法師、徐々に周囲から注目され始める
僕が『暁の翼』に入って、数週間が経過した。
その間、僕たちは10階層に続いて、20階層……30階層と着実に進んでいる。
もっとも、ユノたちは40階層までは一度辿り着いたことがあったみたいだけどね。
まだ僕がパーティーに入って日が浅いということもあって、念のために配慮してくれているみたいだ。
「こちらの確認、お願いします」
冒険者ギルド、エルディナ支部──。
30階層の《階層ボス》を倒した僕たちは、迷宮で得られた魔物の素材や宝を、ギルドに換金しにもらいにきた。
「はい! ありがとうございます! 早速、確認させていただきますね」
ギルドの受付嬢が笑顔で、ユノから換金素材を受け取る。
「それにしても……すごいですね。新しくフィオルさんが入ってから、まだ数週間なんでしょう? それなのに、もう30階層を攻略したなんて」
「ははは……」
なんと言っていいか分からず、僕は愛想笑いを浮かべる。
「フィオルの実力があったら、当然です。前のヴェローナちゃんもよかったけど……フィオルはそれ以上かもしれません」
「なにが起こるか、分からないものですねえ。ヴェローナさんが急に家庭の事情で『暁の翼』を脱退すると聞いた時は、どうなることかと思っていましたのに」
ユノの言葉に、受付嬢は頬に手を当てる。
……僕が来る前、『暁の翼』の四人目のメンバーはヴェローナさんというらしい。
魔法師でパーティーのサポートを主に努めていた、と。
しかし、ヴェローナさんは田舎で暮らす親の介護のため、パーティーを脱退。どうしよう……と思っていた時、ユノに出会ったのが僕というわけだ。
ユノがパーティーでオールラウンダーな立ち回りをしているのも、ヴェローナさん脱退の影響が大きいらしい。
元々ライラと同じくアタッカー寄りなユノは、なんでもこなす立ち回りをせざるを得なかった。
ゆえに一度40階層まで辿り着いているものの、なかなかその先へと進まなかったらしい。
「この調子だと、40階層の《階層ボス》も倒せるんじゃないですか? もちろん、チャレンジするんですよね?」
「もちろんです。そろそろ、フィオルが『暁の翼』に慣れ始めましたし……一週間後──いえ、五日後に勝負をかけようかと」
「五日後! もう少しですね! 40階層の《階層ボス》は二十年前から、一度も倒されていない魔物です。ユノさんたちの活躍を、心から願っています」
そんな会話を交わしていたら素材の換金も終わり、僕たちはまた多額の報酬を手に取るのであった。
「おい……聞いたか? 『暁の翼』、40階層の《階層ボス》に挑戦するらしいぜ」
「一度は挑んだことがあったんだよな? その時も惜敗だったらしいし、二度目の挑戦だったら、倒せるんじゃねえか?」
「まあ、待て。あの時は『暁の翼』に魔法師がいた。代わりに入ったのが、付与魔法師だってよ」
「付与魔法師ぃ? なんだかパッとしないな。あの男……だよな。冴えない風貌をしてやがるが、本当に『暁の翼』のメンバーなのか?」
「見た目だけで判断するな。噂によると、元『ブラックファング』のメンバーで、2倍以上の強化倍率がある付与魔法を使いこなすらしい」
「に、2倍!? そんなの、規格外すぎんじゃねえか! すげえな……さすがはSランクパーティー『ブラックファング』の元メンバー」
ひそひそとギルド内にいる冒険者たちが、僕たちを見て話をしている。
「そういや、『ブラックファング』もこの街に来てんだよな? どっちが40階層……いや、50階層に辿り着けるんだろう」
「そりゃあ、『暁の翼』に決まってるだろ。知ってっか? 最近、『ブラックファング』が10階層に挑んだらしいが、《階層ボス》を倒せずに逃げ帰ってきたらしいぜ」
「10階層の? 嘘だろ? Sランクパーティーだったら、楽に倒せるはずだぜ。どうして、そうなる?」
「俺に聞いても、知らねえよ。なんにせよ、『ブラックファング』は大したことねえのかもしれないな」
『ブラックファング』……?
アゼルたちの顔を思い浮かべる。
あれから、同じ街にいるはずなのに『ブラックファング』のメンバーとは、一度も顔を合わせたことがない。
彼らはSランクだ。ユノたちと戦ったオーガを思い出すに、とても苦戦するとは思えないけど……。
まあ、僕はもうパーティーを抜けた身だ。もう『ブラックファング』のことを気にかけるのやめよう。
「好き勝手言いやがって……うるせえな」
周りの冒険者の声に、ライラが顔を顰める。
「まあまあ、いいじゃないですか。それほどみなさん、私たちに期待してくれているんですよ」
そんなライラを、セラフィナが優しく宥める。
「まあ、いっか。なんにせよ、50階層を攻略したら、嫌でももっと注目されるだろうしな。フィオルがいたら楽勝だろ!」
そう言って、ライラは僕の肩に腕を回す。
……密着しすぎ! 柔らかいところがぷにぷにと当たってるんだけど!
「ライラちゃん、油断は禁物だよ。迷宮ではなにが起こるか、分からない。ただでさえ、50階層の《階層ボス》は規格外の強さって聞くからね。それから、フィオルにひっつきすぎ」
「おっと、失礼した」
ライラが軽い口調で言い、僕から体を離す。
ほっ……よかった……。
決して嫌なわけではないが、僕も男の子だ。ライラみたいな美少女と密着したら、良い思いをしたという気持ちより戸惑いが勝つ。
それに、ライラやセラフィナと仲良くしていると、たまにユノが怖い顔をしてこっちを睨んでくるんだよな……。
僕のことが嫌いなんだろうか?
もっとも、怖くて聞けるはずがないけど。
「そもそも、エルディナの迷宮50階層って誰も辿り着いたことがねえんだろ? それなのに、どうして50階層の《階層ボス》が強えってのが分かるんだ?」
先ほどの感触を思い出し僕がドキドキしているのもつゆ知らず、ライラが疑問を発する。
「ライラ、また忘れたんですか? いいですか。迷宮というのは──」
セラフィナが呆れたような表情をして、説明を始める。
迷宮には魔力の霧……マナミストが満ちている。
このマナミストのおかげで迷宮は地下深くでも昼のように明るく、冒険者たちが探索出来ているというわけだ。
マナミストの効果はそれだけじゃない。
魔物や《階層ボス》、宝の
だからこそ、迷宮は危険な場所でありながらも資源と見なされ、それがある場所は各地から冒険者が集まってくる。
「……というわけです。これでライラに説明するのは、五度目ですよ?」
「そんな細かいこと、いちいち覚えてねえよ。ユノとフィオルは知ってたのか?」
「うん、もちろん」
「僕も知識としては……」
「ちっ。そうかよ」
舌打ちをして、拗ねたような表情を作るライラ。
「だが、それがどうして50階層の《階層ボス》の強さが分かるのに繋がってくんだ?」
「マナミストを分析すれば、迷宮の内部構造が大体把握出来るからです。
魔法師や学者の研究によると、エルディナの50階層には異常なほどのマナミストが溜まっていると判明しています。これにより、50階層の《階層ボス》の強さの推測が出来るわけですね。誰も辿り着いたことがないのに、50階層以上あると分かるのもマナミストのおかげです」
「へえ〜、頭いいヤツは色々考えんだな」
今度は後頭部に手を回し、感心したように言うライラ。
「まあ……オレたちには関係ねえ。相手が誰にしろ、『暁の翼』の敵じゃない。リーダー、そうだろ?」
「油断は禁物……って、また言いたいところだけど、ライラちゃんの言う通りだね。フィオルがいる今なら、どんな相手だって怖くないよ!」
ユノが拳をぎゅっと握る。
……それは僕も同意だ。
僕の力がどれだけ役に立つかはまだ半信半疑だけど、ユノたちは強い。
彼女たちの強さを信じないと、50階層どころか、40階層攻略なんて夢のまた夢だと思うからだ。
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