Sランクパーティーを追放された少年、最強の付与魔法師なり 〜ただの『応援係』だと侮られていたけど、実は声に付与魔法を乗せて仲間全員を強化していたのを、あいつらは知らない〜
第11話 『ブラックファング』、落ちぶれていく(アゼル視点)
第11話 『ブラックファング』、落ちぶれていく(アゼル視点)
翌日。
俺たちは予定通り、10階層の《階層ボス》に挑んでいたが──。
「おい! カトリナ! 早く魔法を!」
「無茶言わないでよ! 今でも一杯一杯! 魔法を放つのだって、時間がかかるのよ!?」
カトリナに指示を出すが、彼女は焦燥感のこもった顔でそう叫び、《階層ボス》のオーガから逃げ回っていた。
「くっ……!」
それに対して、俺は苦悶の声を漏らす。
どうして、こうなった!?
──思えば、ここに来るまでも変だった。
いつもより体が重く、思うように動けない。
カトリナの魔法も鈍く、ウルフ一体を倒すだけでも想定外に手こずった。
ヒーラーのルナも似たようなものだ。ろくに傷を癒せない。
そのせいでたかが迷宮の上層だというのに、《階層ボス》がいる10階層まで辿り着くのに時間を要してしまっていた。
「ルナ! お前もしっかりしろよ!? さっきのオーガの攻撃が、俺の右腕をかすったのに気が付いていないのかよ!? 分かったら、さっさと治癒魔法を唱えやがれ!」
右腕の鈍い痛みを堪えながら、ルナにも指示を出す。
だが、ルナは戦いに付いていくことで精一杯そうだった。魔法を唱えようとするが、その隙にオーガがルナに棍棒を振るう。そのせいで、ルナもまともに治癒魔法を使えない。
「おかしい……どうして、こうなるんだ。今まで、こんなことはなかったってのに」
エルディナの迷宮に、まだ体が慣れていないせいか……?
いや、それにしても限度があるだろう。ここはまだ10階層なんだぞ?
10階層といったら、DやEランクパーティーでも、辿り着くことが出来る。
ましてや、俺たちはSランク。
苦戦するはずがなかった。
「アゼル!」
思考を巡らせていると、カトリナの声が飛ぶ。
ハッとなり見上げると──オーガがその巨体で棍棒を振り上げ、今にも俺に一撃を放とうとしていた。
「……っ!?」
避け……いや、間に合わない!?
俺は即座に横に飛ぶ。
だが、遅い。
オーガの棍棒は、逃げ遅れた俺の右足に直撃した。
「ぐあああああああ!」
痛い! 痛い! 痛い!
なんだ、この痛みは!? 右足の骨……折れちまったか? いや、それ以上の……。
「GAAAAAAA!」
悶え苦しむ俺を見て、オーガが咆哮を上げる。
今まで、取るに足らないと思っていた魔物。
しかし、今の俺の目には、オーガがどんな強敵よりも恐ろしく見えた。
「ちっ……! て、撤退だ! 態勢を整える! 10階層攻略はまた別の機会だ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! そんな急に言って……」
カトリナが反論しようとするが、聞いている暇はない。俺は彼女を置いて、オーガの前から逃げた。
右足を引きずりながらの逃走であったが、なんとかボス部屋から脱出する。
カトリナは「私を置いてかないでよ!」と文句を言っていたが、無視だ。ルナは相変わらず口数が少なく、なにを考えているか分からない。
「なんでだ……なんで、こんなことに……」
ルナに治癒魔法をかけられて、ようやく歩くのには支障がなくなったが……混乱は治らない。
10階層なんて上層ごとき、恐るるに足らずと思っていた。だからこそ、ほとんど準備もせず、俺たちは迷宮に潜った。
だが、結果はご覧の有り様だ。
たかが10階層の《階層ボス》ごときに歯が立たず、惨めに敗走している。
「いや……今日はたまたまなんだ。たまたま、調子が悪かっただけ。明日になれば、元に戻っているはずさ」
自分にそう言い聞かせた。
──しかし、アゼルは知らない。
自分たちがSランクパーティーでいられたのは、彼らが応援係とバカにしていたフィオルのおかげだったということに。
フィオルの付与魔法がなければ、今のアゼルたちの実力はDランク……いや、それ以下だということを。
結果的に『ブラックファング』のメンバーたちはこの日を境に、栄光の道から転がり落ちていくことになった。
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