第8章 さて、一学期の期末試験の結果は……?
第32話 期末試験が終わったので、打ち上げでカラオケ行きます
さて。
7月に入ると、早々に期末テスト期間となる。
「うう……」
「わかんないところは心の中で声に出して読んでみろ。それで大分理解しやすくなるから」
「うん……」
相変わらず、瑠偉のネックは現代文だ。
週明けに試験を控えた週末。
俺と瑠偉は最後の追い込みを行なっていた。
ここ最近の瑠偉は、暇さえあれば教科書を開き、歩きながらノートや要点をチェックして、少しでも点数を上げようと足掻いていた。
(これだけ頑張ってるんだし、成果を出させてやりたいよな……)
そうは思えど、実際に試験を受けるのは瑠偉だ。
俺にできることは、せめて少しでも瑠偉がいい点を取れるよう手伝ってやるくらいしかできない。
(……いや、でも)
無くは無い、か。
俺にもできること。
実行に移すかどうかはさておき。
「これって結局さ、最低でも59位以内には入らないとダメってことだよね?」
勉強中、自分の考えに入りかけた俺に瑠偉がそう尋ねてくる。
「そうだな。59位がボーダーラインだ。とりあえずの最低目標はそこだな」
「……でもそれって、仮に今回59位になったとして、後のテストはずっと1位を取り続けなきゃダメってことだよね?」
……鋭い。
こいつ、さすが数学が得意なだけあるな……。
実際、59位は次の中間の最低ボーダーラインで、それを割ったらその後はどんなにいい点数を取ろうとAクラスに行くのは絶望的だ。
その後、1位を取り続けても1学年の平均35人には到達しないからだ。
「できるだけ高い順位を取れておいた方が後々楽なんだけどな……」
できれば最初に35位内には入っておきたい。
現状、瑠偉が解いた過去問の点数を見ていると、多分30位くらいはいけると思ってるんだけど。
そんなことを考えていると、瑠偉が今にも泣き出しそうな切なげな顔で俺の方を見た後、また黙々と勉強に戻った。
◇
「終わっ……た〜〜……」
期末試験最終日。
全てのテストが終わると、俺たちの前で谷がそう言って「うああ……」と唸り声を上げながら大きく伸びをする。
「俺マジで頭が溶けるかと思った……」
「んな大袈裟な」
「そりゃ、学年4位からしたら楽勝かも知んねーけどよー」
そう言って絡んでくる谷に苦笑で返す。
ちらりと隣の様子を見るが、瑠偉は特段落ち込んだ様子もなく普通に見える。
(……てことは、まあまあできたってことか)
とりあえず、帰って自己採点がてら振り返り会でもするか、と真面目なことを考えていたら。
「なあなあ、テストも終わったんだし遊びに行こうぜ!」
と谷が言い出してきた。
……遊びか。
悪く無いかもな。
こうずっと、張り詰めていてばかりでも疲れるし。
たまにはこうしてテストが終わった解放感に満たされるのもいいのかもしれない。
「遊びに行くって、具体的になんかプランでもあるのか?」
俺が谷にそう尋ねると、
「そだな。カラオケとか……ファミレス?」
「おもしろそう、行きたい」
谷がそう言い出したのに、瑠偉も乗り気になって行きたいと言い出す。
「おー、谷。カラオケ行くんか?」
「俺らも行ってい?」
気付けば、クラスの3分の1くらいが参加することになり、ちょっとしたお疲れ会みたいなものが開催されることになった。
◇
「なあなあ、お前何歌うん?」
「おい、ちょっと待てよ。今俺歌入れてるんだからよ」
カラオケについて、部屋に案内されて。
わちゃわちゃと同じクラスのクラスメイトたちがやりとりしているのを見て、ふと思った。
(……あれ? これ、
そもそも、こいつの歌って子供の時以来まともに聞いてないんだけど。
何歌うんだ?
歌える? 歌う?
「……おい瑠偉。お前、歌いたくなかったら無理しなくてもいいんだからな」
「え? なんで?」
………………なんで、って…。
そんな瑠偉は、当然のように俺の隣に来て、ぴったりとくっつくようにして座っている。
ぴっぴっぴ、とどうやら選曲を終えたらしい瑠偉は、リモコンを元の位置に戻すと、後はクラスメイトの歌のノリに横乗りで合わせながら俺にべしべしとぶつかってくる。
……大丈夫かなあ?
「お! 次は真瀬か! 何歌うんだ!?」
瑠偉がマイクを取ったことに気付いたクラスメイトがやんややんやと囃し立てながら尋ねてくる。
どこかハラハラしながらそれを見つめていた俺は、こいつが何を歌うのだろうかと心配でモニターを見る。
すると瑠偉が選曲したのは、最近流行っていたアニメのオープニング曲だった。
……こいつ。
俺と一緒に見てたアニメのオープニング、いつの間にか完コピしてやがる……!
期末の勉強でガチ勉強会を始める前に、部屋でスマホで一緒に見ていたアニメのオープニング曲(女性ボーカルのやつ)を完璧に歌えている瑠偉に驚愕した。
「おおおおお〜〜〜〜! うめ〜〜〜〜〜!」
「つか真瀬、すげーな! 両声類じゃん!」
いや……、両声類とかじゃなく、れっきとした女子なんですけどね……。
しかしどうやらクラスメイトからは特に怪しまれる様子もなく、単に声の高い男子で通ったみたいだ。
ほっ……。
………………。
それにしても、確かにうまいな……。
そう思いながら、瑠偉が選曲した曲を歌うのを隣でじっと見つめていると、歌い終わった瑠偉が俺が見ていることに気付き、なぜか『どやぁっ……』とドヤ顔された。
はいはい。可愛いですね。
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