第22話 (SIDE 瑠偉)幼馴染のルームメイトが格好良すぎてたまりません
――自分が中間テストでこんなにも結果を出せないなんて。
夢にも思っていなかった。
正直、テストを受ける前までは、まあまあいけると思っていた。
だって、前の学校では大体いつもトップあたりにいたし。
学校の授業でも別にわからないところもなかったし。
だけど――。
(何これ。選択式の解答がほとんどない。丸暗記しろってこと?)
(これ……、漢字、なんて書くんだっけ? ひらがなで書いたら減点される?)
実際にテストを受けてみると、思考から解答を導き出す問題ではなく、暗記した答えを記載する問題が多すぎてびっくりした。
(え、そもそもこんなテストだったら、勉強の仕方から違った)
そう思った時には――、もう時すでに遅しだった。
◇
中間テストの総合順位。114位。
人生初めての屈辱。
こんなに悪いテスト結果を取ったこと、今までなかった。
でもそれ以上にショックだったのは――。
(この成績じゃあ、来年脩と同じクラスにはなれないよ……)
学校に入学させてもらうところまでは伯母に頼みまくってなんとかしてもらうことはできた。
でもクラス分けは多分無理だ。
だってそれは、私が自分で努力すべきことだから。
(…………どうしよう。間に合うかな)
今から必死で勉強して。
年度末のクラス分けまでに脩に追いつけるだけの結果を出せるか。
それを思うと暗澹とした。
なんならちょっと泣きたいくらいの気持ちだった。
そんな時――。
『瑠偉がそんなに来年も俺と同じクラスがいいなら、俺も手伝ってやるよ。お前がテストで点数上げられるように』
そう言ってくれたのだ。脩が。
私が来年、一緒のクラスになれるよう、勉強を手伝ってくれると。
(ううううう、やっぱり好きいいいいい…………!)
なんなの?
格好良すぎない?
そもそも、普段はそんなに頭がいいですよムーブをしてないのに、さらっと学年4位とか取るところからして格好いい。
そして、その結果を特に鼻にかけたりしないところも。
当たり前みたいに学年4位とかとるの、格好よくない?
それでもって、私が困っているのを見かねて、手を差し伸べてくれるのだ。
優しすぎる……!
大好き……!
如月脩という男の子は、そういう男の子なのだ。
だから、ずっと忘れられずに、今も好きでいる。
そうして、脩に対する『好き』という思いは、毎日一緒にいるようになった今でも、際限なく大きくなっている。
◇
脩が勉強を手伝ってくれるようになって、もうひとつ分かったことがある。
「……脩、ここのとこ、意味わかんない」
「あ〜、ここかあ……」
……勉強してる時の脩。
格好いい…………!!!!
横から見上げた時の、顎のしゅっとしたラインとか格好いいなあって思うし。
教科書を持つ手首の筋張った感じとかえっちだなあって思う。
あと、真剣に考えている顔を間近で見れるのも格好いい。
「……おい瑠偉。なんか近くないか?」
「だって、冷房寒いんだもん」
だから脩で暖を取るのだ、ともっともらしく言う。
本当は、寒いならエアコンの温度を上げればいいってわかってる。
でもエアコンの温度を上げるより、脩とくっついていたいからわざとそう言ってみる。
すると脩は、「じゃあエアコンの温度上げろよ……」と言って温度を上げながらも、くっついているのはそのまま許してくれるのだ。
優しい。
『……ねえ、脩。冷房効きすぎて寒いし、脩があっためてよ』
とか言ってみたら。
脩、どんな反応するかなあ……。
普段は淡々としている脩が、私がそういうことを言う時、一瞬なんとも言えない顔になるのが好きだ。萌える。
何かを期待して――我慢するみたいな顔。
あの顔が、我慢しなくなればいいのに。
「……瑠偉?」
「うん、ちゃんと聞いてるよ」
ここの答えがこうでしょ、と私が脩から説明されたことをちゃんと適切に答えると、「……ん、合ってる」と短く返される。
『僕、本当は男の子じゃないから、脩の好きにしていいんだよ』って言ったら。
……引かれちゃうかなあ?
脩に触ってもらえるのは嬉しいし、気持ちいい。
ふわっとした幸せな気持ちになる。
本当はもっと触って欲しいけど、どこまでだったら脩が引かないでいてくれるかわからないから、ずっと探っている。
男の子でいるから近くなった距離は、男の子で居続けるせいで逆に遠い。
――それでも、まだここに居たいから。男の子で居続けることはやめないけど。
(……脩、大好き)
そんな気持ちが、少しでも伝わるといいなと思いながら。
でもとりあえずは今は、来年も脩と一緒にいられるよう、とにかく必死で勉強を頑張る。そう思って。
今日も、ヨコシマな気持ちを隠しながら、勉強を続けるのだった。
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