一度読んだら感動するし、二度読んだらもっと感動する

最初に驚いたのは、伏線の貼り方の丁寧さです。雨だれ、かなう、事故、音楽用語、バス停の名前etc。それでいて、ただの伏線としてあるのではなく、それ自体にしっかりと意味が付与されているのがすごいと感じました。例えば、音楽用語を用いた独特な記述です。作品らしさを象徴するだけでなく、たぶん、奏雨がそういう表現をするのは音楽に対して未練を持っているからという理由づけになっています。名前もそうです。かなう、とだけ聞くとてっきり「叶」という字なのかな?と思うけど、実際は雨を奏でると書いて「奏雨」というのは上手いミスリードだと思います。
次に驚いたのは、雨という有りふれたモチーフを多角的に描写するすごさです。頭痛や事故などの悲観的な一面、店主との再会の運命的な一面、虹などの良い一面。まさしく、「雨と一言で言っても」な作品だと思います。(雨は一般的にはネガティブなイメージを持っているからこそ、奏雨に共感できるし、反対のイメージも想像できるから、すごくわかりやすい気がします。)
あと、フォローの描写も上手いです。皿洗いのシーンとか、友達の謝罪とか、そういうちょっとしたモヤモヤのフォローが丁寧だから、読後感がスッキリしています。
僕はショパンについて詳しくないので軽率なことを言いいますが、物語に登場するショパンの曲を文章に書き起こすと、この作品になるんだと思いました。応援してます。(正直に打ち明けると、本当に同じ高校生とは思えません。叙述能力が卓越しすぎてない???)

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雨だれ