第2話
嘉保中、古めかしい建築様式と管理人不足のせいで苔むした外観と、そこからは想像できないことに四国一の管理用サーバーを所有していることがウリの我らが母校。そのおんぼろさからついた異名は『機能的な廃墟』。……センスないでしょ、この異名を広めた人。まんますぎるって。
バスの運転手さんにしっかりと頭を下げて、ちゃんと髪の毛をくくっているのを確認して、美容にうるさい明美の寝ぐせチェックを経てから私は校門をくぐる。
私たちの市では今日から新しい学年が始まって、私と明美は晴れて中学2年生になる。
ちなみに私たちの学校は1学年に生徒が41人しかいない。スクールバスを走らせるほどの広大な学区にもかかわらず、だ。
まあ、いい。
相変わらず取れない汚れがこびりついた中央玄関には、クラス分けが貼ってある。1クラスにまとめればいいのにって思うけど、先生は先生で数が余っているらしい。いや、とはいえ3クラスは多すぎるって。どうなってんだ、ここの教育委員会は。
えーと、荒木田だから、「あ」……えー、そうでしょうよ、いっつも一番上に名前が書かれてるんだもん。探すときのわくわく感ってものが微塵もない。せめて愛須とかさ、そういう苗字の人がいてくれたら……って、どうせどこかのクラスの頭にいるのには変わりないか。
1組1番 荒木田 沙良
えっと、友達は……
いくら探しても1組に明美の名前は無い。
2組14番 森 明美
……そうだった、貴方もすっごい分かりやすい苗字してたね。
隣では明美が私の両手をぎゅっと握ったままうなだれている。
うーん、参ったな。校則で休み時間のクラス間交流は何故か禁止されてるし。
そんなに私たちがお嫌いですか、学校長サマ。
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