───

ここ最近、どうも体調がおかしい。


夜は中々眠れないし、朝起きるのが凄くしんどい。

しかも、部活動が始まると一段と悪くなる。

梅乃にはなんとなく悟られたくなくて、無理するようになった。

でもそのせいか、梅乃に対してすぐに感情的になるようになったし、何故か、目を合わせるのがすごく怖い。


どこかおかしい。一回休んだ方がいいのはわかってる。 でも、ライブが近づいてるから、サボることは出来ない。


今日も込み上げてくる吐き気を必死に堪えながら練習に取り組む。

途中で忘れ物に気づき、荷物がある講堂に向かかう。


「顔色悪いけど、大丈夫そう?」


「……華先輩」


三年生の引退ライブでバンドを組む、華先輩がそこに居た。


まだ数回しか話したことないけど、もしかして今の私には他人にも分かるぐらい体調が悪そうに見えるのだろうか。

いや、そんなこと考えてる場合じゃない。

早く返事しないと。

いつものように大丈夫だと誤魔化そうとした。


「……大丈夫じゃ、ないです」


ポロッと出た言葉は、本心だった。

涙で視界が滲む。


どうして……?

今まで、隠せてきたのに。


激しく咳き込む。胃の中にある違和感を吐き出そうとしているみたいだ。


先輩は何か察したのか、慌てて荷物をまとめてこちらへやってくる。


「今日ぐらい、サボっちゃおうよ」


そうやっていたずらっ子みたいに笑う先輩に連れられて私は部活を早退することにした。


キーボードを取りに帰る途中で、梅乃に会って、「どこに行くのか」と尋ねられた。 なにも考えずに「華先輩と……」とまで言ってなんとなく気まずい気持ちになる。

梅乃の顔が一瞬顰め面になって、すぐ笑顔になった。


「たまには息抜きも必要なんじゃない?

ここ最近思い詰めてたでしょ?」

「……うん!」


梅乃の許可も出たし、先輩とカフェ、楽しもう。


こうして華先輩に連れられて、今までの経緯を全部話した。というか根掘り葉掘り聞かれた。


話したあと、華先輩は眉間に皺を寄せながらこう言った。


「それはね、普通の友達じゃないよ、千鶴ちゃん」


───普通の友達はね、お互いのことを束縛しないよ。何をするにも許可なんて、必要ない。


……なんとなく気づいてた。


でもこうやって改めて他の人に言われてしまうと現実を突きつけられた気がして、胸が苦しくなる。


「何が最善かわからないけど、多分これ以上音木ちゃんのそばに居たら、千鶴ちゃんもっと壊れちゃうよ」


だから、距離を取った方がいいと思う。

お互いのためにも。


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