第27話 元リーダーSide5


《オクレールSide》


 森呪術師ドルイドのもとへ向かってる……。

 途中トラブって、イエスマが脱水でぶっ倒れた。


 そのまま放ってはおけず、巨漢を引きずって進んだ。……くそが。

 メスガッキには馬鹿にされるし、イエスマには足を引っ張られるし……! ああくそっ!


 何より面白くねえのは……あのガイアが、評価されてるって事実だ!

 なんだよ……商人どもめ、ガイアが超有能だと?

 ざけんなや! あんなのただの荷物もちだろうが……!


 ……たしかに、いろいろできるやつではあった。欲しいアイテムをぱっとくれたし……。

 ああ、くそくそくそ!


 だめだ……! オレもアイツを評価しちまってる……!

 オレは信じねえ! あんな雑魚が有能だったなんて!


 雑魚一人いなくなったくらいで、このオレ――黄昏色の最強ドラゴンが地に落ちるわけねえんだよ……!


 で、だ。


「なんとか……ぜえはあ……森までたどり着いた……」


 森呪術師ドルイドがいるという森の入り口へとやってきた。


「いったーい……足が棒のようだわ~……」


 ぶつくさ言いながらも、メスガッキはついてきている。

 散々オレをこけにしつつも、このパーティにしがみついてるのがわかる。


 Sランカーってのはめちゃくちゃ優遇されるし、周りからちやほやされるからな。

 こいつもその地位を失いたくねえんだろう。ったく……。


「おいイエスマ、大丈夫か?」


「は、はい……すみませんリーダー……でゅふ……ふがいなくて……」


「いいからさっさと行くぞ」


 イエスマも復活し、オレらは森の中へと入っていった。

 ひたすら前へ進む……。


「おい、森呪術師ドルイドの住みかって、こっちでいいのか? なんも言わねえけどよ」


 するとメスガッキとイエスマが首をかしげる。


「え、知らないわよ」


「拙者もしらんでござる……」


 ………………は?


「はぁああああああああああああああああ!?」


「なんで誰も知らないんだよ……!」


「はぁ? それはこっちのセリフなんですけどぉ~?」


 メスガッキが、見下すような表情で言ってくる。


「街の呪術師から森呪術師ドルイドの居場所を聞いたのはオクレールでしょぉ?」


「そいつがこの森にいるってことまでだよ! 目的地までのルートは当然調べてるもんだろ!? ああ!?」


「調べてないわよ。だって……そういうの調べるの、ガイアの仕事だったじゃないのよ……」


 …………ちっ。くそっ! そうだった……!


「あーあー、ガイアってすごかったわよねえ。討伐、採取……どんなクエストでも、ちゃんと下調べして、迷わず目的地まで導いてくれてたんだから」


「グッ……!!!!!」


 メスガッキのやつ……もう完全にガイアの有能さを認めやがった。

 ……しかも追い出した責任を、全部オレに押し付ける言い方で! クソむかつく!


 てめえだってガイアを無能とさげすんでただろうが馬鹿女が!


「リーダー! 前、前を見るでござるぅ!」


「あ……?」


 茂みから魔物が飛び出してきた。

 このばかでけえ蜂は……女王殺蜂キラークイーン・ビー……!


 オレは背負っていた竜殺しを抜く。


「おら死ねクソ魔物ぉ!」


 大剣を振り上げ、振り下ろす――ずどぉん!

 ……大抵の魔物は、これ一発で粉砕されるはずだ。だが……。


「ブブブブブブ……!」


「ちょっとぉ! 何してるのよぉ! 当たってないじゃないのよぉ!」


 チッ……! 蜂野郎が素早くて当たらねえ……!


「おいメスガッキ、てめえの番だ! オレがこいつを引きつける。てめえは近付いてナイフでぶっさせ」


「ったく、しょうがないわね」


 盗賊のメスガッキの方が素早い。

 オレは竜殺しを振り回し、蜂の注意を引く……くそ、引きつけ役なんてやりたくねえ!


 以前のオレなら、この大剣で軽やかに敵を倒してたってのによぉお!


 メスガッキは蜂の背後に回り――。


「【刺突】!」


 盗賊のスキルが発動。完全に……獲った!


 かきんっ!


「「な……!?」」


 オレもメスガッキも驚くしかなかった。


「そ、そんな……! あたしのナイフがはじかれた!? なんで……!? いつもならどんな敵も打ち抜けたのに……きゃぁ!」


 女王殺蜂キラークイーン・ビーの針が、メスガッキの右肩を貫いた!


「メスガッキ!」


「あぁああ……! 痛い痛いぃいいいいいい!」


 地面に這いつくばり、泣きわめく。


「いやぁあああああああ! 死んじゃうぅううう! 痛いよぉおおお!」


 ……痛いっておまえ。


「大丈夫だろ! 傷は浅い!」


 針は貫通してない。重傷じゃない……はずなのに。


「いやぁあああああああ! 痛いぃいいい! やだぁああああ! 死んじゃうぅうう!」


 ああ、くそ! どんだけ痛みに弱いんだよ……!

 盗賊は防御力が低いにしても……。


 ――そうか。こいつが敵から攻撃を受けたの、これが初めてなのか。


 今までメスガッキは、素早さで敵を翻弄し、攻撃を全部避けてきた。

 だが今回は……避けられなかった。


 なぜだ?


 ……冷静なオレがささやく。


『ガイアのサポートが無かったから。メスガッキはガイアの力で素早さが超向上していた。だから今まで攻撃を軽々と避けられていた』


 抜け落ちていたパズル。穴だらけのそこに、答え《ピース》がどんどんはまっていく。


「痛いよぉお! リーダーぁあ! たすけてよぉおお!」


 ああ、畜生……!

 どうしてこうなっちまったんだよぉ!

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