第18話 料理を絶賛される



 キャラバン隊は街道を数時間進んだのち、小休止に入った。


 商人たちは馬に餌をやり、自分たちも腹ごしらえ。馬車に乗っているだけでも、意外と体力は削られるからだ。


 そのあいだ、俺たち冒険者は交代で周囲警戒。俺が昼飯を作っている間は、他の面子が見張りについてくれている。


「よし……こんなもんかな。できました!」


 呼びかけると、ギンコさんたちがぞろぞろと集まってくる。


「ほう……これはまた変わったサンドイッチだな」


 今日の献立は、スープとホットサンド。腹にやさしく、手も早い。


「私たちはあとで食べるから、銀の剣の皆さんどうぞ先に~!」


 リィナとノエルが見張りを続行。ギンコさん、ブトーさんたち銀の剣は、受け取りに来た。


 紙に包んだホットサンドとスープを配る――と。


「はぐ……んんぅーーーーーーーーーーーー! こいつはぁぁぁぁぁぁ!」


 武闘家ブトーさんが目を剥いた。


「坊主……! なんだこのサンドイッチ! うますぎる!」

「お気に召して何よりです」


「はぐっ……うまっ! これはただのサンドじゃないな!? おかしい……!」


 他の面子も夢中で頬張っている。


「ん~! やっば! ねえねえ君!」


 魔法使いの少女がぴょこんと跳ねて近づく。

「あ、あたしマジコ。よろしくね~」

「よ、よろしく……」


 ノリが軽い。ノエルとは真逆系統の魔法使いだ。


「これマジやばい! ホットサンドなのに、うま味がぎゅう~っと詰まってる感じ! どうなってんの?」


「お察しの通り、ちょっと“押して”ます。フライパンで軽くプレスをかけて」


 加重グラヴ・ブーストで適度に圧をかけ、パンと具を一体化。ハム・野菜・チーズの旨味を閉じ込める。


「そんな調理法はじめて聞いた! きみ天才! この料理、名前ある?」

「え、いや……」

「つけちゃいなよ!」


「え、えー……じゃあ……“パニーニ”で」


 パンの料理だから。わりと適当。


「パニーニ! いいね! うまいよパニーニ! ね、ブトー?」

「マジコの言うとおりだ! うまい……! うますぎる!」


 あっという間に皆の皿が空になる。


「ねえガイアっち」

「が、ガイアっち……?」


 今、俺の呼び名?


「パニーニおかわりある?」

「え、ああ。少しなら」

「やった☆ じゃあちょーだい!」

「む、ずるいぞマジコ! おれもおかわり!」


 銀の剣たちがパンをがつがつ。……そんなに気に入ってもらえるとは。


「ガイアさぁ~ん……」


 リィナとノエルが恨めしそうにこちらを見ている。


「私たちも、パニーニ食べたい……」

「大丈夫。ちゃんと二人の分の具材は確保してある」


 ――そのかわり、俺の分は消えるが。


「ガイア君の分がなくなるのでは?」


 さすがギンコさん、目ざとい。


「おほん。私のを半分やろう。た、食べかけで悪いが……ま、まあ致し方ないな」

「え、いや……」


「食べないと力が出ないだろう。さ、食べるのだ。ほら、私の食べかけを」


 ぐいぐい押し込まれる。


「ガイアさぁぁぁぁぁん! そんなの食べるくらいなら、あたしと半分こしよっ、はーんぶーんこ!」


「リィナ……見張りしてくれ……もがっ」


 ギンコさんが半分を強引に俺の口に。……普通にうまい。


「ひゅーひゅー☆ 間接キッスじゃーん♡ えっち~♡」


 マジコが肘でつついてくる。


「す、すみません……」

「何を謝る。やましいことなどないさ」


 ふっとギンコさんが微笑む。


「ギンコっち、ほんと肉食系~。自分から間接キス取りにいくなんて~」

「ち、違う! 不可抗力だ。間接になるとは思ってなかった、うん」


「うっそだぁ~」


 和やかな食事。……いい。仲間と食う飯って、本来こういうものだ。元パーティでは一度も味わえなかった空気だ。


「ガイア氏ぃいいいいいいい!」


 背後からキャラバットさんが全力ダッシュで現れ、肩をがしっと掴む。


「ど、どうしたんですか……?」

「銀の剣の方に分けていただきました! そのパニーニ! うますぎますはい!」

「そ、そうですか……ありがとうございます」


 まさかキャラバットさんまで。


「すごいぞ、ガイア君。キャラバットさんは美食家で有名なんだ。その舌を唸らせるとは」

「本当においしいですはい! ぜひ、うちで商品化したいです、はい!」

 

 しょ、商品化……。


「いや、プレスは“ただ押せばいい”わけじゃないんで。加減が要る。強すぎると見た目がぺしゃんこです」


「くぅぅぅ! ガイア氏! やはりうちに! 銀鳳ぎんおう商会に来てくださいいいい! お願いしますですはいぃぃ!」


 めちゃくちゃ熱心に勧誘されるが、俺の答えは変わらない。


「すみません」

「おーーーーーーのーーーーーーーー!」

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