第8話 決闘と別れ

バイザーを使って勇者の能力を確認して見たところ魔法を使うのに特化した勇者のようだ。

 「相棒! 行くぞ!」

「了解です!」

「そんな痩せ細ってデカい的でやるなんてとんだ馬鹿だな!」

勇者は魔法を放ってきたが俺は軽々とそれをかわした。

「くっ……。ならば次の魔法を……」

「させるかぁー!」

7mもある巨体のキックが勇者を吹き飛ばした。今ので肋と内臓が潰れたのが感覚で分かった。

「グフ……」

「相棒。ジェットの燃料はまだあるか?」

「たっぷりあります」

「ならば決めるぞ!」

「まだだ……まだ終わってなーい!」

相手の勇者は諦める気はなかった。"勇者"としての意地をみせ右手を空に伸ばして魔法の準備を始めた。

「今度はなにが来るんだよ」

「現れろ! ハードゴーレム!」

なにもないところからいきなりゴーレムが目の前に現れた。それも俺よりもデカく軽く20mは超えてやがった。

「おぉ! 召喚魔法だ!」

「感動するのは後にしてくれないか?」

だがそのゴーレムには違和感があった。ゴーレムの話なら俺も聞いたことがあり土人形だってことを知っていた。でも勇者が呼び出したゴーレムは俺の世界の兵器に少し似ている武装があった。

「お前……」

「どうだ驚いただろ? 僕の世界の知識とこの世界の知識を合わせた最高傑作さ!」

「てめぇ……どこで手に入れた……?」

見間違えることなどありえないことだった。なぜならその装備は"シグマ"のNCについていたものだったからだ。

「どうしたそんな怖い顔をして?」

「質問に答えろ……どこで手に入れた?」

「こいつの装備か? 僕と一緒に現れた勇者が持っていたものさ。ムカつくやつだったからスキをついて殺して奪ったんだよ」

「このクソ野郎……!」

"シグマ"はムカつく野郎ではあったが友を見捨てず仲間想いで俺たち"家族"の一員だった。

「後悔させてやる……。相棒、今すぐにOMEGAシステムの準備をしろ……」

「ですがまだ相手の力量を測れてません……」

「いいからさっさと準備をしろ!!」

「了解です……」

「クソガキが今すぐ地獄に送ってやる!」

「やれるもんならな!」

ゴーレムの武器はライフルに剣とシンプルではあるが魔法を使ってくるのが厄介だ。

「だが懐に入ってしまえばこっちのもんだ」

「パイロット。OMEGAシステムスタンバイです」

「OMEGAシステム起動!」

起動と同時に相棒の顔に付いてるバイザーとマスクが開き排熱を始め目が紅の色に光った。

「システム終了まで残り時間は60秒!」

「くたばれー!!」

俺はハードゴーレムの懐に入りショットガンとサブマシンガンの集中砲火をお見舞いさせた。そしてよろめいたその瞬間を狙った。

「機体のエネルギーをジェットに回せ!」

「了解! システム終了まで残り時間30秒!」

「一気に終わらせる!」

俺はジェットの機能を最大まで稼働させスピードが極限まで跳ね上がり、蹴りとパンチを繰り出した。ゴーレムの身体はどんどん穴が空いていきボロボロになっていった。

「くそ……暑くなってきやがった……」

「排熱が間に合ってません! システム終了まであと20秒!」

「これで終わりだぁぁぁ!!!」

最後の一撃をくらわせようとしたが勇者がゴーレムの修復を始めやがった。

「残念だけど魔力はまだ残ってるんだよ!」

ゴーレムの渾身の攻撃で地面が揺れ俺は隙をだしてしまった。もう一発くらいかけたがなんとか避けて地面まで腕が埋まるほどの威力だった。

「パイロット! 弱点は頭にある心臓です!」

俺は腕をつたって頭にある心臓をジェットの噴射の勢いでキックをして打ち砕いた。心臓が無くなったゴーレムは段々とヒビが入っていき最終的には砂となって消えていった。

「ぼっ……僕のゴーレムが……!」

「あとはてめぇだけだぜクソガキ……」

俺は勇者の身体を掴み取り頭の前まで持った。

「まっ……待ってくれ! 闘いは終わりだぞ!」

「何言ってんだ? お前がいるじゃねぇか」

「待て……待ってくれ……やめろー!!」

俺は奴の頭を噛み砕いてやった。吐き出したときにはただの肉の塊となっていた。

「ふぅ……やっと終わった……」

「システム終了……」

相棒はシステムの終了と同時にバイザーとマスクを閉めてコックピットを開けた。

「あぢぃ~……」

「お疲れ様ですパイロット」

「これじゃあサウナだろ」

「内部の温度は60℃を超えてますからね」

「戦闘服でその温度はキツイわ」

「ならば早く冷却用と排熱用の装備を見つけてください」

「そんな無茶な……」

俺が周りを見渡したときには騎士たちが唖然としていた。

「なに驚いてんだよ。勝ったんだからさっさとこっちの要件を聞けや」

「あっ……。そうだったな……」

俺が出した要件はエルフたちの森に手を出さないこと、このことは一切外に漏らさないこと、そして"シグマ"の遺品を渡すこと。

「分かった全て受け入れよう。全軍撤退だ!!」

彼らは騎士たちを連れて王国に帰って行った。

「流石に疲れたな……」

俺は暑さのせいで熱中症を引き起こしていた。60℃もあるコックピットにいたらそりゃあそうなる。

「少し眠るぞ……」

「パイロット!?」

俺はそのままコックピットの中で眠りについた。起きたときには宿の部屋の中にいた。

「ここは……宿か……?」

「目覚めた?」

「その声はアリスか……?」

「外で皆が待ってるよ」

「そうか……。えっ? ちょっと待て皆?」

俺はベッドから身体を起こして窓をから外を覗いた。そこには大量のエルフが群がっていた。

「どうしてこうなった……」

「それはこの里を守った英雄なんだから」

「えぇ……」

「そういえば長老から話があるだってよ」

俺は外にいるエルフたちにバレないように隠れて長老のもとに向かった。

「それでなんの用だ?」

「お主の言っていた報酬を渡そうと思ってな」

「その前に1つ言わなければいけないことがある」

「ふむ……それじゃあワシとこやつの2人で話そうか」

「察してくれて助かるよ」

俺は長老と2人で話すことにした。俺がこの世界の者ではないこと、帰る方法を探していることについて。

「あれだけのものを見たら納得できるわい」

「それでどうにか元の世界に帰れる情報はないか?」

「ふむ……ならば魔王の所に行けばいいだろう」

「なんで魔王なんだ?」

「お主を転生させた方法が魔法によるものならば魔法を扱うことに優れた魔族……魔王が適任だろう」

「なるほど……それでその魔王はどこにいるんだ?」

「ここから南に40キロ進んだ所にドワーフの住む炭鉱を越えてそこから30キロ進んで港に着く。そして船に乗り魔族の住む島まで行けば着くはずだ」

「遠いな」

「人間と敵対してるから会えないようにしてるんだろう」

「まぁいい、有益な情報を感謝するぜ」

「いえいえ里を助けてくれた者なんですから」

「それじゃあ俺はこれで」

「もう行くのかい?」

「時間は無駄にできないからな」

「そうか……達者でな」

「婆さんも元気でな」

俺はそう言って世界樹から離れて宿の外で待っている相棒のもとに向かった。

「おかえりなさいパイロット」

「相棒次の任務だ」

「?」

「魔王に会いに行くぞ」

「魔王ですって……。最高じゃないですか!!」

「ならさっさと行くぞ」

俺は相棒に乗り込んで里の出入り口まで行った。そして門の下には"アリス"が立っていた。

「やぁアリス」

「もう行くんだってね……」

「ゆっくりはできないからな」

「うん……頑張ってね!」

「ありがとうよ、じゃあな」

俺はそう言って手をふり見送る"アリス"を見ながらエルフの里とお別れをした。

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