第14話
前期末試験が終わり、数日後の講義。
ざわつく教室に教授がゆっくりと入ってきた。
出席を確認し、黒板にチョークを走らせる前に、ふと立ち止まる。
「さて、今回の試験だが——全体の平均点は決して高くはなかった」
教室に小さな笑いとため息が広がる。
教授はその反応を受け流しながら、淡々と続けた。
「だが、その中で特に優秀な成績を収めた学生が一人いる」
その言葉に、場が静まる。
誰だ、と視線が行き交い、空気に微かな緊張が走った。
教授は目を細めて教室を見渡す。
ゆっくりと視線が流れ、そして——偶然か、それとも意図的か。
颯真の座る席で一瞬止まった。
視線が合った気がした。
教授の口元にわずかな笑みが浮かぶ。
「……期待しているよ」
それだけを残し、教授は再び黒板に向き直った。
チョークが走り出す音が響き、教室の空気は再び通常に戻っていく。
周囲の学生たちは小声で囁き合う。
「誰だ?」「……編入のやつか?」
だが、当の颯真は表情を変えず、静かにノートを開いた。
数日後、学内に奇妙な噂が広がった。
「編入生が、満点だったらしいぞ」
「いや、さすがにそれは……」
「でも教授が講義で『特に優秀な学生』って言ってただろ?」
確かな根拠は誰も持っていない。
ただの憶測と推測が混ざり合い、廊下や学食で囁かれていた。
颯真はその断片を耳にしながら、心の中で小さく息を吐いた。
(……少し目立ちすぎたかもしれないな)
だが、それ以上でも以下でもない。
噂はやがて消える。誰も正式な順位を知るわけではないし、他大学にはさらに優秀な人間がいくらでもいる。
自分の役割は「群れの中で抜きん出ること」ではなく、「確実に積み上げること」だと分かっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます