Ep.05【03】「ドロイドは見ていた」





現場に到着したストレイキャッツ一行を待っていたのは

焦げ臭さが残る廃墟と化した企業の残骸だった。

ここ数日の雨で煤が流れ出し、靴が一瞬で黒ずんでいく。

「うっわ!めっちゃ汚れる!!!!」

リオが足元を気を付けながら、燃え残った残骸を避けて入っていく。

「あー・・・・こりゃひでぇな・・・・・予想以上だぜ」

ハヤテは器用にぴょんぴょんと飛びながら。

「すーちゃん、来なくてよかったよぉ・・・まぁ、バイクに3人なんて乗れないからいーけど」

セスティアは何も気にせず、ずんずんと入っていった。

 

社内は黒焦げの機材や焼け落ちた木材が散乱し、煤の匂いが鼻につく。

周辺は警察の警戒線テープが貼られてはいるが、誰も居なかった。

ただ、燃え残り真っ黒になった可哀想なドロイド達が出迎えるだけ。

「さーて・・・・無駄かもしれんが、一応探してみるか」

いまいち乗り切れないハヤテは、手近にあった端末の残骸を調べ始めた。

「そーね・・・・たぶん何にもないだろうけどっ」

「あー・・・・・早く帰ってすーちゃんのクレープの残り食べたいなぁ・・・・」

リオもセスティアも同じくやる気は全くの0。

ノロノロと廃墟の社屋を2人は当てもなく探し始めた。

 

3人が緩慢な動きで手がかりを探しだして、約1時間が経過していた・・・。

 

「あ~・・・・・もぉ!やっぱ何にもないじゃん!!」

リオが不満を漏らす。

見ると、グラブも足も煤で黒ずみ汚れてしまっていた。

「確かにこりゃダメだな。

手がかりになりそうな物証は手当たり次第、NTPDに持ってかれてるぜ」

とハヤテも諦め気味。

「でも、師匠・・・なんでここって狙われたんです?

特になーんにもないけど??」とセスティア

「何にも無ぇから狙われたんだよ。

こういう零細企業にネットセキュリティに掛ける金なんか無ぇからな。

自前で何とかしようとしたんだろうよ」

ハヤテが燃え残ったドロイドの残骸を見ながら言った。

「自前で?」リオは言葉の真意をいまいち理解できない。

「要するに、名うてのハッカーに対応なんて到底出来ねぇから

ハッキングされたら物理で回線を切断させてたんだよ、この会社は」

 

「「は??」」

 

思わずリオとセスティアがハモる。

「つまり、ハッキングを汎用ドロイドで防ごうとしたって事?

・・・・・・・・・・・・・・呆れた」

リオは天を仰ぐ。

「じゃあ、この可哀想なドロイドって・・・・・・」

セスティアはハヤテを見やり言う。

「ま、そういうこった。

コイツがずーっとネットを監視して、ハッキングされそうになったら物理で

ネット回線をぶった切る!・・・・って力技だ」

「うっわ・・・・・・・・・・・」

さしものセスティアもドン引きである。

「でも、結局は侵入されて、こういう有り様なんだよね?」とリオ

「相手は凄腕のハッカーだぞ?

物の数秒でハッキングが完了するんだから、物理切断なんぞ

やってる暇なんてねーよ」

ハヤテもやれやれといったポーズを取り、説明をしていた。

黒焦げたドロイドをジッと見ていたリオがふと思いつく。

「ねぇ?って事はさ、コイツって数秒は画面を見てた・・・って事よね?」

黒焦げのドロイド見ながら、リオがハヤテの説明に疑問を持つ。

「まぁ・・・・・そうだな・・・・・・・・ん?・・・・・画面を??」

ハヤテは何かに気付いた。

「師匠?」

セスティアが声を掛けるが、ハヤテは聞かずに近くの焼け焦げたドロイドの

アクセスポートにチューブ・アームを接続した。

 

数秒の沈黙

 

「お嬢・・・・やっぱ、お前鋭いぜ。

コイツのカメラのメモリー残渣に面白いものが映ってやがった。

たぶん、NTPDも気づいてねぇな・・・・こりゃ」

  

  

リオはハヤテがニヤリと笑った気がした。


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