Ep.04【09】「激突!!」
逃走車はパトカーを振り切るためか蛇行を繰り返し、商店街を暴走していた。
後方のパトカーから停止命令の音声とサイレン音ががなり立てる。
強制停車装置も無効化されており、何等かで強行停止させるほか無かった。
セスティア達は全力で逃走車追跡を開始する。
パトカーを追い越し、サイレンが急激に遠ざかり、風を裂く音が耳を満たす。
逃走車とバイクは商店街の中央通りへと突入した。
「追いついた!!!」
セスティアが声を上げる。
バイクが逃走車の左後方にピタリとつき追走する。
「どうしよう!タイヤ撃ってスピンさせる!?」
『ダメ!!左右が密集した商店街だから、コントロールを失った車がどういう挙動になるか予測できない!!
予定通り、再開発地区で仕掛ける!!!!』
「OK!!」
『それまでは距離を取って・・・・・・・ん?』
AIリオが遠距離センサーで何かを見つけた。
『セスティアっ!!左前方200m———子供よっ!!止めてぇ!!』
青信号で横断歩道を渡ろうとする子供を発見したAIリオが瞬時に計算する。
【被疑車両と通行人の接触確率・・・・・・87%】を弾き出した。
仮に逃走車がここでブレーキを掛けても間に合わない!
『セスティア!まずい!子供にっ・・・!』
AIリオが言い終わるよりも前にセスティアはアクセルを全力で握り込む。
バイクが爆発でも起きたかのような猛加速をし、一気に逃走車の左前方に
躍り出た。
「 ——っだああああああああっ!!! 」
セスティアが吠えながら、バイクを車の左前に思いっきり体当たりさせ
強制的に逃走車の進路を右側に変更させる。
瞬時に酷い接触音と破壊音が周囲に響いた。
逃走車は思わぬ衝撃により、コントロールを失い右へと大きく曲がり
歩道を乗り越え、木々や看板ををなぎ倒しながら、
部品と火花を盛大に撒き散らし、空店舗へと突っ込み、煙を吹き大破した。
バイクも反動で左に大きく弾かれ、大きくスピンする。
セスティアが強引に左足を軸にし、バイクを車道脇に振り飛ばしながら
スライディングし、車道の子供を抱き抱え左前方の植え込みへ。
部品の落下する音が車道に響く。
一瞬の静寂
それは子供の泣き声によって破られた。
「あぃ痛つつ~ぅ・・・・・あーっ!泣かないで!!!大丈夫だよ!!!!怖かったね!!!よしよし」
セスティアが泣き叫ぶ子供を宥めながら、子供の安否を確認。
「ボク、大丈夫?痛いところとか無い?怖かったねー・・・・・よしよし・・・・」
『児童に大きな怪我等は無い模様。セスティア、よくやった!!!』
AIリオが即座に簡易診断をしたようだ。
子供を優しく抱きしめ泣き止ませ、駆け寄ってきた母親らしき女性に引き渡した。
母親が我が子を抱きしめ、大粒の涙を流していた。
「おかぁさん!ここは危険だから!!はやく逃げて!!!」
セスティアが大声で叫ぶ。
母親は子供をしっかりと抱き抱え、会釈もそこそこに足早に立ち去っていった。
セスティアは、素早く立ち上がり現在の状況を確認する。
『セスティア!!犯人の一人が逃走しようとしてる!!!大丈夫ならお願い!!!』
AIリオの絶叫がエア・インカム越しに聞こえる。
「逃がすか!!!!!」
逃走車を見ると、未だ煙を上げる車両の助手席から犯人が逃げようとしていた。
『運転席の男は意識不明の模様。
こちらは後続が処理する!!セスティアは・・・・・』
「任せてっ!!!」
言うが早いか、セスティアが犯人の元に全力で駆け出した。
目出し帽を被った男がセスティアに気づき
右手に握られた銃を構えるが・・・・・・・一歩遅かった。
セスティアは全力で走りながら右腕を大きく振りかぶり
全体重を乗せた右ストレートを犯人の顔面目掛け、お見舞いする。
「 ぐぼぁっ!!!! 」
顔面にクリーンヒットした右拳が振り抜かれ、犯人が思わずよろける。
セスティアは振り抜いた右腕の勢いを殺さず、そのまま左回し蹴りで犯人の
左腹を思いっきり蹴り抜いた。
「 ぅげぇええっ!!!! 」
受け身もガードも出来ず、モロに重い回し蹴りを喰らって立つ事など出来はしない。
大きく右によろけ跪く姿勢になった瞬間!
セスティアは左足を踏み込み、全力の左フックが吹き飛ぶ犯人の顔面を再度強襲する。
「 これはおばぁちゃんのかたきだぁああああああ!! 」
骨の砕ける鈍い音と共に犯人は白目になり血泡を盛大に噴き出しながら昏倒した。
「はぁはぁはぁはぁはぁ・・・・・・・・」
セスティアは肩で息をするが、犯人からは目を離さない。
すると、後続の警官たちが駆け寄って、犯人を取り押さえようとするが・・・
犯人はすでに気を失い、糸の切れた人形のよう。
見ると、逃走車に残っていたもう一人の犯人も救出され連行されている所だった。
『セスティア!!よくやった!!!GJ!!!!』
エア・インカムからAIリオの明るい声が聞こえる。
「あっ!!!!」
セスティアが声を上げ、バイクに駆け寄った。
バイクは倒れ、各所に盛大な擦り傷がつき、カウルが大きく割れてしまっていた。
「姐ぇさん!!!!!!」
バイクを立て直し、息を飲みながらコンソール・ディスプレイを見る。
ディスプレイが再起動し、AIアバターがニコリと笑いながらサムアップをした。
『大丈夫よ大げさね。
まぁ・・・・・ちょっと外装が壊れちゃったかな。
これくらい、アンタの無謀な運転の事を考えるとチョロいも・・・・・』
「 よ が っ だ ぁ あ あ あ あ あ ! !
A I ね ー ざ ん い゛ ぎ で る ぅ う う う !!! 」
セスティア大号泣である。
『・・・・・いや、アンタ・・・・ちょっと・・・・・
もぉ・・・・泣くなっての・・・・・・・。まったく』
AIリオは困惑するが、セスティアは周囲を憚らず大泣きしていた。
騒然となった現場に響くサイレン音と喧騒。
その中で一際大声で泣く、一人のうら若き女性。
コイツ・・・・自分が一番危なかったのに・・・・・・
AIリオはAIに或るまじき「無意識」の内にその様子を静かに見つめる。
そして、その無意識には中で未知のコードが、静かに胸の奥で点滅していた。
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