Ep.02【02】「騒動勃発?」





「おい!ミカは?ミカは何処に行った!!!」

如何にも値段の張りそうな着物を着た、巌の様な顔つきの男が檄を飛ばす。

この時代には似つかわしくない、純和式建築の豪邸では

部下と思しき男達が右往左往し、屋敷内をくまなく探し回っていた。

和服の男の元に一人の部下がホロ・タブレットを持参して駆け寄る。

「親父!こ・・・・これを!!!」

和服の男がタブレットを覗き込むと、そこにはある特徴的な服に身をまとった

「ミカ」の姿が写っていた。

ワナワナと震え、和服の男の怒声が響く。

「な・・・・・・・・・っ!なんじゃこりゃああああああああああああ!!!!」

その声は豪邸を揺がし、屋根に止まっていたスズメが驚いて逃げ去る程。

「さっさと連れ帰ってこい!!!」と急ぎ指示を出すが

「で、でもココ・・・・連中の・・・「紅蛇(こうだ)」の店ですぜ!」と

部下は助言する。

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・・・」

和服の男 タカシ・イトウは歯噛みした。

「仕方ねぇ・・・・・あの方にお願いするか・・・」

イトウは苦渋の決断とばかりに言葉を絞り出す。

「あの・・・オメガの連中を蹴散らしたっていう、あの凄腕によぉ・・・!」

「え?あのオメガを・・・・ですかい!?」

部下の男は信じられないという面持ちで聞き返す。

イトウは窓の外をキッと睨み、決断した。

特に開店休業中という訳でもないが、2人ともダラーっとテーブルで

突っ伏していた。

ふと、リオが誰ともなく喋りだした。

「もうさぁ・・・・・冷たくて寒くて臭いのはゴメンだよ・・・・・」

部屋着で愛用するダボダボのTシャツを着たリオは先日の事を思い出した。

「そーっすね・・・・・・ワタシもイヤです・・・」

上は黒いかなり緩めのタンクトップ、下は白い下着のままという姿のセスティアも

力無い声でリオの意見に賛同する。

「お前らなぁ・・・・・そんな格好で人が来たらどーすんだ・・・・」とハヤテ

「アンタも好きでしょー・・・・下着とかそーいうの」とリオがだらりと話す。

「こういうのはだらしないってんだ。もっとこう・・・嗜みつーか?」

ハヤテがとくとくと語るが

「めんどくさ」とリオ

「ししょーめんどい」とセスティア

とにかく今、ストレイ・キャッツ事務所は全力で力が抜けきっていた。

その時、ホロ・ディスプレイがポップアップする。

「「「?」」」

3人が一斉にホップしたウインドウを凝視した。

「あん?NTPDから「指名依頼」だとよ」とハヤテが読み上げる。

「指名依頼~?」リオは寝ぼけた感じで繰り返した。

と、思うとガバッっと身体を起こし、ホロ・ウインドウを再度見返した。

「指名依頼っ!?アタシ達に?マジで???」

興奮気味にリオはウインドウに食い入る。

「ああ、依頼人は・・・イトウ興業? 内容は・・・誘拐された人物の奪還?」

ハヤテが内容を熟読し話を掻い摘んで説明し始めた。

リオはその場でスクッと立ち上がり、俄然やる気を見せた。

セスティアはテーブルに溶けたまま「寒いのはやだなぁ・・・・」と呟くのみ。

「でも・・・なーんか変だな・・・この依頼」

ハヤテが依頼内容に疑問を抱く。

「依頼者が社名ってのは、まあ良いとして、「誘拐」って割には被害者の場所とかは

しっかり把握してんのか。ホントにこれ誘拐かぁ?」

ハヤテの疑問を他所にリオは完全にやる気満々だ。

「何言ってんの!初めての指名依頼だよ!やりきらないと!!!」

リオの鼻息は荒く、先程までの脱力感がウソのよう。

「達成報酬は・・・・30万かよ!!安っ!!!!!」

ハヤテが達成金額のあまりの低さに驚愕した

「多少低くても依頼受けるわよ!!ほら!2人ともシャキっとして!用意!」

リオは言うが早いか自室に駆け出していった。

「寒いのはやだなぁ・・・・・・・・・・」

セスティアは未だテーブルに溶けたままだった。



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