第2話 塾の先生

少し前の話をします。


塾、通ったことありますか。わたしはそこそこ長く同じ塾に通っていました。

塾の先生とどれくらい話しますか。仲良くなりますか。


わたしは塾の中で、沢山の人を見てきました。生徒も、先生も、沢山入れ替りました。

その中から、とある先生を、少し思い出します。


先生とは、特別一緒にいた訳でもありませんでしたが、気づいたら話が盛り上がる仲でした。

わたしは自分のバイトが結構好きで、

「今週は沢山働いた。」

「今月はこんなことがあって…」

とよく話題に挙げていました。話を聞いてくれる先生はよく

「今度行っちゃおっかなぁ。」

とにこやかに呟いていました。働いてる時間に来てくれたら、もっと頑張れる!と思い、

「是非来て!」

と毎回返していました。


(でもそれは社交辞令。話の、相槌。)心のどこかで、そう思っていました。

(早く来てくれないかな)って、少し切ない気持ちになってしまう。期待ではなく、諦めでした。


普通に働いていたある日、先生がひょっこりと、にこやかな顔でやって来ました。

「え?」

何も意識してないのに、わたしの頬が勝手に緩みます。すごく、嬉しかった。


なんだろう、小さな"嬉しい"なんです。でも、わたしの記憶に残っているものは、そういうものばかりなんです。


「行ってみようかな」「聞いてみようかな」言ってくれたことが、「本当に来てくれた」「本当に聞いてくれた」。わたしとの次の会話に繋がる。静かに、感動してます。


コミュニケーションの繰り返し、その延長にある行動。寝て食べて働くこと。わたしの生活にプラスに働くのは、人との繋がりです。原動力であり、目的です。


本当に来てくれた塾の先生。

先生のことを、少し思い出します。

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