第50話 私と貴女㊿
「ねぇ、瑠璃。明日は休日だしデートしない?」
その提案に対して即答しました。
もちろん、二つ返事で了承しました。
彼女と一緒に過ごせるのは嬉しいですし、何より楽しみです。
当日は何をしようか考えているうちに眠気が襲ってきました。
それに抗うことなく瞼を閉じます。
そのまま眠りにつきました。
翌朝、目が覚めるとすでに朝食の準備が終わっていました。
テーブルの上にはパンと牛乳が置かれています。
それを見て、思わず唾を飲み込んでしまいました。
すごく美味しそうです。
早速、いただこうと思います。
手を合わせていただきますと言ってから食べ始めます。
パンを一口齧ると芳醇な香りが口いっぱいに広がります。
とても美味しいです。
幸せな気分になれます。
その隣で彼女は幸せそうに微笑んでいます。
その笑顔がとても眩しくて直視できません。
思わず目を逸らしてしまいました。
彼女はクスクスと笑っています。
揶揄われているようで少し不愉快です。
ですが、それよりも今は食欲の方が勝っています。
一刻も早く胃袋を満たしたい一心で食事を続けます。
しばらくして全て平らげてしまいました。
改めて、手を合わせてご馳走様でしたと呟きます。
そんな私を見て、彼女は満足そうに頷きました。
その後、後片付けをして身支度を整えます。
準備を終えて外に出ると爽やかな風が吹いていました。
気持ち良い天気です。
絶好のデート日和と言えるでしょう。
今日はどんな素敵な時間を過ごせるのでしょうか?
ワクワクが止まりません。
そんなことを考えていると、不意に彼女が声をかけてきました。
「ねぇ、瑠璃。どこに行きたい?」
そう聞かれて咄嗟に答えられませんでした。
考えてみれば、今まで誰かと遊んだ経験がありません。
当然、行きたい場所などあるはずもなく、何処が良いのか検討もつきません。
困っていると、彼女が助け舟を出してくれました。
「じゃあ、映画館に行かない?」
その提案を聞いた瞬間、心の中で拍手喝采しました。
素晴らしいアイデアだと思います。
正直、映画にはあまり興味がありませんが、彼女と一緒に見られるなら話は別です。
二つ返事で了承しました。
そして、早速出かけることにしました。
駅前まで歩いて行く途中、色々なお店が目に入ってきます。
ゲームセンターがあったり、喫茶店があったりと賑やかな街並みになっています。
その光景を見ていると、自然と心が踊ります。
早く行きたいという気持ちが強くなります。
しかし、ぐっと堪えます。
我慢することも大切だと教わりましたから。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか目的地に到着していました。
映画館の看板が見えます。
あそこに行くんです。
緊張しますが、楽しみでもあります。
期待に胸を膨らませつつ中に入りました。
館内は明るく清潔感のある雰囲気に包まれていました。
平日ということもあり、お客さんは少ないようですがそれなりに賑わっています。
空いている席を見つけて座りました。
隣を見ると彼女がこちらを見て微笑んでいます。
それだけで幸せな気持ちになれます。
上映開始まで時間があるので何か話そうと思いましたが、特に話題も見つからず困ってしまいます。
そうすると、彼女の方から話しかけてきました。
「ねぇ瑠璃」
不意に声をかけられてドキッとしてしまいましたが、平静を装って返事をしました。
そうすると、彼女は続けてこう言いました
「手繋ごうか?」
一瞬何を言われたのか、理解できませんでしたがすぐに理解しました。
まさか、彼女の方からそんなことを提案してくるとは思ってもいなかったので驚きましたが、素直に受け入れました。
差し出された手を握ると、彼女の温もりを感じ取ることができました。
心臓の鼓動が激しくなります。
顔も熱くなってきました。
きっと、今の私の顔は真っ赤になっていることでしょう。
恥ずかしくて俯くことしかできませんでした。
しばらくすると映画が始まりました。
内容は恋愛ものみたいですが、あまり興味はありません。
それよりも隣に座る彼女のことが気になってしまい、集中できませんでした。
そこで思い切って彼女に話しかけてみることにしました。
そうすると彼女がこちらを向き驚いたような表情を見せましたが、すぐに笑顔になりました。
「どうしたの?」
その問いに私は言葉を返します。
「いや、その……」
言い淀んでいると、彼女は私の言いたいことを察してくれたようで頷いてくれました。
その瞬間、胸の奥底から温かいものが溢れ出してきました。
嬉しさのあまり涙が出そうになります。
それを悟られないように顔を背けます。
そうすると、彼女は優しく微笑んでくれました。
その笑顔を見て私は確信しました。
彼女も私のことを好きなのだということを。
その事実を認識した途端、全身が熱くなりました。
心臓の鼓動が激しくなります。
呼吸が乱れます。
頭がクラクラします。
まるで熱に浮かされたかのような錯覚に陥ります。
そんな状態のまま、どれくらいの時間が経過したでしょうか?
不意に彼女が口を開きました。
「ねぇ、瑠璃。これからもずっと一緒に居てくれる?」
その質問に対し、私は即答しました。
もちろん、二つ返事で了承しました。
彼女と一緒に居られるならどこへだって行きますし、何だってできます。
例え火の中水の中でも構いません。
それが私の望みであり、彼女との約束なのです。
その後、私たちは家路につきました。
帰り道はとても静かでした。
お互い無言のまま歩き続けます。
時折、視線を感じることもありましたが気にせず歩きます。
やがて、自宅に到着すると二人で部屋に入り扉を閉めます。
そして、荷物を下ろすとベッドに倒れ込みました。
仰向けになり天井を見つめます。
今日一日のことを思い出します。
映画を見て手を繋いで一緒に歩いたことを。
そのすべてが幸せでした。
一生忘れない大切な記憶となりました。
これからもずっと一緒に居たいと思っています。
「ねぇ、キスしない?」
ふと頭に浮かんだ疑問を口にしてみると、彼女は戸惑いを見せました。
おそらく唐突だったからだと思いますが、気にせず続けます。
そうすると彼女は頬を赤らめながらも同意してくれました。
それから私たちは互いの唇を重ね合わせました。
最初は触れるだけの軽いものでしたが、徐々に深いものへと変わっていきました。
舌と舌が絡み合い、唾液が混ざり合います。
甘い痺れを感じながら、何度も角度を変えながら貪るように求め合います。
その間もずっと手を繋いでいました。
離れないようにしっかりと握りしめました。
そうしているうちに酸欠になりそうで苦しくなり、一度中断しました。
唇を離すと銀色の糸が垂れ下がっており、それが妙に官能的に見えてしまいました。
そして、再度口づけを交わします。
今度は最初から激しいものでした。
まるで獣のように相手を求め合い続けます。
限界を迎える寸前まで続けた結果、どちらともなく口を離しました。
肩で息をしながら見つめ合います。
その表情は恍惚としておりとても艶っぽいものでした。
そんな彼女を見ていると、またキスがしたくなりましたが我慢します。
代わりに、額にキスをしてあげました。
そうすると彼女は目を瞑り受け入れてくれました。
それが、また可愛らしくて仕方ありませんでした。
その後、シャワーを浴びて着替えたあと寝室に向かいました。
そこで並んで横になると自然と手を繋いでいました。
温もりを感じて幸せな気分になります。
そうしているうちに眠くなってきたので目を閉じます。
次第に意識が遠のいていき眠りにつきました。
それから一週間が経過したある日のこと、いつも通りの日常を送っているとインターホンが鳴りました。
モニターを確認すると来客の姿があります。
知らない人だったので、警戒しながら扉を開けるとそこにはスーツ姿の女性が立っていました。
年齢は三十代半ばくらいだろうか?
表情からは読み取れませんでしたが、少なくとも好意的には感じられませんでした。
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