第45話 私と貴女㊺

彼女は、カレーを一口食べて、目を輝かせました。

どうやら、お気に召したようです。

良かったです。

一安心です。

次は、自分の番です。

彼女からスプーンを受け取り、食べ始めます。

口の中に広がるスパイスの香り、野菜の甘み、肉の旨味が絶妙にマッチしています。

美味しいです。

頑張って作った甲斐がありました。

幸せな気分に浸りながら、完食しました。

食器を片付け、テーブルを拭き掃除して、一段落つきました。

次は、入浴です。

疲れを癒すために、ゆっくり湯船に浸かりたいところですが、そうもいきません。

なぜなら、彼女が待っているからです。

急いで浴室へ向かいます。

扉を開けると、そこには素肌の彼女がいました。

一糸纏わぬ姿で立っています。

どうやら、先に入ったようです。

私が来るのを待っていたのでしょう。

申し訳ないことをしました。

すぐに脱衣場に戻り、服を脱ぎ捨てます。

そして、素肌になって浴室に入りました。

鏡越しに見える自分と彼女の姿に、思わず見惚れてしまいます。

美しい肢体に、吸い込まれそうなほど澄んだ瞳。

全てが愛おしく感じられます。

こんな素敵な人と一緒にいられるなんて、夢のようです。

でも、これは現実なのです。

現実なんだ、そう思うと自然と笑みがこぼれます。

これから先、どんな困難が待ち受けていようとも、乗り越えていける気がします。

彼女と一緒にいれば、どんなことでもできるような気がします。

そう信じています。

さて、そろそろシャワーを浴びましょうか。

ヘッドを手に取り、お湯を出します。

適温になったところで、頭から被ります。

シャンプーを手に取り、泡立てます。

髪全体に行き渡らせた後、指の腹でマッサージするように洗います。

トリートメントを塗布し、馴染ませます。

しばらく放置した後、流します。

リンスをつけて、軽くすすぎます。

コンディショナーを付けて、揉み込みます。

五分ほど置いた後、洗い流します。

タオルドライした後、ドライヤーで乾かします。

ブラッシングをして、ヘアオイルを馴染ませます。

次に、ボディーソープを手に取り、泡立てます。

首筋から鎖骨にかけて、丁寧に洗います。

脇の下を洗う際は、特に念入りに行います。

デリケートゾーンを洗う時は、慎重に扱います。

傷つけないように優しく撫でるように洗います。

お腹周りや背中も忘れないように洗います。

最後に、足の裏まで綺麗に洗います。

湯船に浸かり、リラックスします。

肩まで浸かり、目を閉じて深呼吸します。

一日の疲れが取れていくようです。

気持ちが良いです。癒されます。

でも、もっと癒される方法があります。

それは、彼女を抱きしめることです。

その温もりを感じていると、心が満たされていきます。

幸せを感じます。

ずっとこうしていたいです。

でも、そうもいきません。

名残惜しいですが、切り上げましょう。

風呂から上がり、着替えることにします。

バスタオルで水滴を拭き取り、下着を着用します。

パジャマに袖を通します。

準備完了です。

リビングへ戻ります。

テレビを付けて、ソファーに座ります。

リモコンを操作して、チャンネルを変えます。

ニュース番組を選択します。

アナウンサーが淡々と原稿を読み上げます。

内容は、株価の変動や政治家の不祥事などです。

興味深いものもありますが、今日は特に見るべきものはありません。

別のチャンネルに切り替えます。

バラエティ番組を選びます。

芸能人がトークを繰り広げています。

中には、下品な発言をする人もいますが、面白いので許容範囲です。

それに、彼らのお陰で場が盛り上がるので助かっています。

お笑い芸人の漫才が始まりました。

とても面白いです。

笑いすぎてお腹が痛くなるほどです。

最高です。

気分転換になりました。

これなら、明日も頑張れそうです。

やがて、番組が終了しました。

次の番組に切り替えます。

ドラマの再放送です。

内容は恋愛ものです。

主人公の男女が出会い、惹かれ合い、恋に落ちるストーリーです。

典型的なパターンですが、見ていて飽きません。

むしろ、共感できる部分が多くて面白いです。

登場人物の台詞や行動に感情移入してしまいます。

特にヒロインの気持ちが理解できるので親近感が湧きます。

自分のことのように感じてしまうのです。

不思議な感覚です。

これがフィクションだということを忘れてしまいます。

現実との区別がつかなくなりそうになります。

危険な兆候です。

気をつけなければなりません。

そう言い聞かせつつ、視聴を続けます。

エンディングテーマが流れ始めました。

そんな時、隣に居る彼女を振り向くと、

「ふふっ、どうしたの?」

と可愛らしく小首を傾げました。

その仕草がまた可愛らしくて、思わず抱きしめたくなってしまいました。

でも、我慢しました。

今じゃないと思いましたから。

代わりに頭を撫でました。

サラサラとした髪の毛が指の間をすり抜けていきます。

心地よい感触です。

ずっと触っていたいです。

やがて、名残惜しくも手を離しました。

彼女は不満そうな顔をしています。

もっとして欲しかったみたいです。

でも、これ以上はダメです。

自制しなければなりません。

自分に言い聞かせ、立ち上がります。

そろそろ寝る時間です。

遅刻しないようにしなければなりません。

急いで布団に入ります。

枕元のリモコンで照明を消します。

真っ暗闇に包まれます。

視界が奪われた状態では、他の感覚が研ぎ澄まされます。

彼女の息遣いや体温を感じます。

ドキドキします。

鼓動が激しくなります。

収まる気配がありません。

どうやら、眠れそうにありません。

困ったものです。

何か眠れる方法はないでしょうか? 

考えているうちに、あるアイデアが浮かびました。

早速実行に移します。

ゆっくりと、彼女に近づいていきます。

そして、そっと抱きしめます。

柔らかな感触と温もりに包まれます。

とても安心します。

心が落ち着きます。

気持ちが安らぎます。

このまま眠ってしまいたい衝動に駆られます。

でも、それでは勿体無い気がします。

せっかく二人きりになれたのですから、有効活用しなければ損です。

そう考え、彼女に話しかけます。

「ねぇ、聞いてもいい?」

そう問いかけると、

「うん」

と返事が返ってきました。

許可を得たので質問します。

「どうして、私のことを好きになってくれたの? 私なんて地味で取り柄がないのに」

「私からすれば、瑠璃の存在そのものが輝いているの」

何だろう、不思議と納得してしまいました。

そんなはずないのに、そう思わせる力があったのです。

不思議な魅力を感じました。

魔法にかけられたみたいに、彼女の言葉を信じてしまいたくなります。

怖いくらいです。

抗うことができません。

逆らう気も起きません。

ただただ従ってしまうのです。

これが恋の魔力なのでしょうか? 

だとしたら、恐ろしいものです。

人を狂わせる力を持っています。

気をつけなければなりません。

流されてしまわないように注意が必要です。

自制しなければいけません。

でも、なかなか難しいものです。

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