『日向くんへ』

 貴方が今この手紙を読んでいるということは、今日一日のデートが無事に終わり、楽しく家路についているということでしょう。


 今更手紙で何を、と思われるかもしれません。無理もないでしょう。普段から貴方への愛は十二分に口にしているつもりです。

 ですが、まだ足りません。貴方への愛が胸の内で燻って、溢れてどうにかなってしまいそうです。

 なので、伝え足りない部分は私達らしく手紙に綴ることにしました。


 貴方のことが好きです。大好きです。この世のなによりも、貴方を愛しています。


 私を暗闇から救い出し、生きる理由を与えてくれた貴方のことが大好きです。


 貴方が他の女に恋をしたと知った時はひどく焦りました。

 私の事だけを見ていてほしいのに、他の雌の元へと飛び立とうとしている貴方の背中を見ると胸の奥の方がぞわぞわしたのを今でも覚えています。


 しかし、それが今の関係に踏み切る決断にもなりました。あの女にはもう顔は合わせたくないけれど、一応感謝はしておこうと思います。


 先日の球技大会、見事な活躍でした。

 決勝戦での第二セット、貴方が跳んだときは得も言われぬ高揚感と喉に突っかかる違和感を感じたのが記憶に新しいです。

 過去に打ち勝った貴方の姿を嬉しく思ったのと同時に、私の知らないところで成長してしまったことが残念に思ってしまいました。


 こんな私でも愛してくれますか?浅ましい欲に囚われ、貴方を欲する私を嫌いにならないでくれますか?


 多分、貴方は愛してくれるのでしょう。


 貴方は少し優しすぎる部分があると思います。……説教じみてしまってすいません。

 ですが、私は不安です。その優しさが他の女に向いてしまった時、私は正気でいられる自信がありません。

 その優しさに時折、自分を失ってしまいそうになります。理性という枷が外れてしまった時には、あの時のように優しく受け止めてほしいです。


 長くなりましたが、今回はここで終わりにしようと思います。

 最後になりますが、いつもありがとう。こんな私を支えてくれて、自分と突き放さずに隣に立とうとしてくれるのは貴方だけです。

 私を孤独から救ってくれるのは、いつも貴方です。


 勝手ではありますが、これからも私を側で支えていてくれると嬉しいです。私もまた、貴方を側で支えます。


 今日はありがとう。きっと未来の私のことだから、また近いうちに会うのだと思います。その時はまた貴方に愛を囁こうと思います。

 

 今までもこれからも、貴方の事を愛しています。この思いが、貴方の心に届くことを願って。


                               如月燐火より

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る