第10話 遊園地の夜明け前

 遊園地の建設はほぼ完了していた。観覧車の骨組みが空にそびえ、ジェットコースターのレールは夜空にうねる。だが、静まり返った夜、遊園地全体には微かな異様な空気が漂っていた。


 赤い衣のピエロの残滓が、遊園地全体の影として揺らめく。影は視界の端にちらつき、直接的には姿を現さない。だが、空気を通じて無意識の恐怖を植え付け、建設作業員たちや街の人々の心にじわじわと影響を与えていた。


「これが……契約の影か」

 影山は高台から遊園地を見下ろす。懐中時計を握り、過去からの連鎖を確認する。赤い光は森や空き地の頃の記憶を宿し、白い衣の女の意思が心理的圧力として人々に働く。作業員は理由もなく不安を抱き、誰もその正体に気づかない。


 夜、遊園地の奥で赤い光が強く揺れ、霧の中にピエロの影が微かに現れる。手を伸ばすと霧に溶けるが、空間に微かな振動を残す。夢の中で作業員たちは、赤い衣のピエロに追われ、白い衣の女の囁きが混ざる。目覚めると額や腕に痣が浮かぶ者もいる。心理的恐怖は現実に影響し、遊園地全体の雰囲気に張り付く。


 影山は懐中時計を微かに巻き戻すが、事故は一部しか防げない、しかも心理的影響も消せない。

「契約の影は、物理ではなく心を蝕む……未来への伏線だ」

 赤い衣のピエロと白い衣の女の意思は、遊園地の空間に潜み、無意識の恐怖を作り出す。


 翌朝、街の人々は遊園地完成のニュースに胸を躍らせる。だが、目には見えぬ赤い光の残滓が遊園地全体に張り付き、未来の子どもたちに微かに影響を与える。影山は高台に立ち、遠くで遊ぶ子どもたちを見守る。

「未来の子どもたち……颯斗と彩を守るため、目を離せない」


 遊園地は完成し、人々の歓声を待つ。しかし、赤い光の残滓は消えず、契約の影は遊園地の建物やレールに潜み続ける。白い衣の女の意思は潜在的に人々を縛り、赤い衣のピエロは無意識の恐怖として影響を残す。


 夜空に星が瞬き、観覧車の骨組みが月光に反射する。影山は懐中時計を握り直し、未来への干渉を最小限にとどめつつ、赤い光の残滓を見守る。

「この連鎖は……まだ終わらない。だが、守るために見続けるしかない」


 遊園地の夜は深く、静かに、契約の影と共に新たな物語の幕開けを待っていた。赤い衣のピエロと白い衣の女の意思は、過去から現代、そして未来へと確実に連鎖している。

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