第9話 赤い残滓の夜
建設が進む遊園地予定地。広大な敷地には重機や資材が散らばり、工事は最終段階に近づいていた。しかし、不可解な事故が相次ぎ、死者も出た。作業員たちの間に恐怖が広がる。
一台のクレーンが突然制御を失い、資材が空中で不自然に揺れる。作業員が必死にブレーキを操作するが、なぜか動きは遅く、風もないのに資材はふわりと浮くように揺れた。周囲の人々は息をのむ。
影山は遠くの高台から見下ろす。懐中時計を握り、危険な瞬間だけ時間を微かに巻き戻す。クレーン操作は正常に戻り、一部の作業員たちは無事に避けられた。だが、心理的影響は消せない。赤い衣の道化師の残滓が、工事現場の空間に微かに揺れ、異常な空気を作り出しているのだ。
夜、作業員たちは夢の中で赤い衣のピエロに追われる。白い衣の女の囁きが混ざり、逃げても逃げても道は終わらず、足元には赤い光が広がる。目を覚ますと、額や腕に微かな痣が浮かぶ者もいた。心理的恐怖は現実の不安と結びつき、作業員の間に互いを疑う空気が生まれる。
翌日、重機の異常、資材の落下、設計図の紛失など、原因不明のトラブルが立て続けに発生する。作業員たちは次第に疲弊し、互いを責め合う。契約の影響は、物理的な怪異ではなく、心理的恐怖として街の未来へ連鎖していた。
影山は懐中時計を握り直し、高台から森の縁に視線を送る。赤い衣のピエロの残滓は物理的攻撃をしないが、視覚や空間感覚に干渉し、人々の行動を制御する。白い衣の女の意思もまた、契約を通して心理的圧力を与え、無意識に人々を縛る。
夜空には赤い光が微かに揺れ、建設現場を包み込む。影山は懐中時計を手にし、危険な瞬間だけ干渉する。直接的な事故は防げるが、心理的影響は消せない。夢や恐怖として人々に残り、未来に連鎖していくのだ。
その夜、工事現場の奥で赤い光がひときわ強く揺れ、霧の中にピエロの影が現れる。手を伸ばすと影は霧に溶けるが、視界の端で微かに揺れ続ける。作業員たちは理由もわからぬまま恐怖を感じ、声を出せずに固まる。
影山は静かに息をつく。
「契約の影は、物理的な災厄ではなく、人の心を揺さぶる……これが未来への伏線」
懐中時計を握る手に、過去から未来へ連鎖する契約の重みが伝わる。赤い衣のピエロと白い衣の女の意思は、目に見えぬ形で遊園地建設中の土地を支配し続けていた。
翌朝、現場の空気は一見平穏に戻る。だが作業員たちの瞳には微かな恐怖が残り、無意識に互いを疑う仕草が現れる。赤い光は目には見えないが、確かに存在する。影山は高台で立ち止まり、遠くの街を見下ろす。
「未来を守るため……見守り続けるしかない」
赤い衣の道化師の残滓と白い衣の女の契約の意思は、過去から現代まで確実に連鎖していた。遊園地建設の土地に、血の契約の影が静かに息づく夜であった。
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