第47話 デートプランどうしよう
「で、デート?」
「そ。いいじゃん2人で行って来れば」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」
全力で手を振りながら同じ言葉を繰り返す。
突然の提案で脳の処理が追い付かず、これくらいの言葉しか口から出てこないのだ。
「動揺し過ぎでしょ。そんなに無理なの?」
「いや無理って言うか……何と言うか……ほら、俺別に1回もデート何かしたこと無いし」
「そんなの知ってるし」
「あれ?」
以前に話したことがあっただろうか。
それともまさかこれまで俺の話してきた内容から予測したというか?
……もしそうだとしたら相当な着眼点だ。
「童貞にエスコートとかは最初から期待してないし、できないだろうし、童貞だし」
「そんなに童貞童貞言わなくても良いだろ!」
高校生で童貞なんて普通だろ!
……多分。
……きっと。
……そうであって欲しい。
駄目だ、無理に思い込もうとすると逆に苦しくなってくる。
「でも大丈夫でしょ。あんたが誘ったら恵奈絶対喜ぶと思うよ」
そう言いきってコーンポタージュを飲む如月さん。
からかっているようでも、茶化しているようでもない物言いだった。
「何でそこまで言えるんだよ」
そもそもデートの提案をしてきたのもよく分からない。
最初はクリスマスプレゼントで何を贈るかという相談だったのだ。
話の流れから出てきたには少し突発的過ぎると思えてきた。
すると如月さん缶から口を離し、唇を舌で舐めてから声を出した。
「ん~? 普通に恵奈、めっちゃ喜びそうじゃない?」
瞬間、俺の頭に満面な笑顔でテンション爆上げで喜んでいる柚木さんの顔が浮かんだ。
『やったー!』と声を大きく上げていて、ネイルとか服を考えている彼女の姿が。
まるで未来を見てきたかのようにはっきりと、くっきりと、しっかりと想像できる。
「……確かに」
思わず笑みを浮かべてしまうくらいには。
すると如月さんも小さく笑いながら言った。
「ま、もしデート失敗したらその時は蹴るからね」
「え?」
デート以上にとんでもない発言をされ、一気に身体が固まる。
まるで金縛りにでもあったみたいに。
如月さんはそんな俺を全く気にずさらに言葉を続ける。
「裕太と同じサンドバックになりたくなかったら頑張ってね~」
「ちょいちょいちょい! 待って待って待って!」
手を振りながら教室の方へ戻ろうとする彼女を全力で止めようとする。
すると意外にも素直に足を止めてくれて、軽くこちらを向いてくれた。
「あ、コンポタありがと。美味しかった~」
「今それ⁉ そうじゃなくてさっきのことについてさ!」
「じゃね~」
「ちょーい!」
どんなに叫んでもそれ以上彼女が歩みを止めることはなかった。
◆◆◆
「デート……デート……」
昼休み。
本来であれば柚木さん先生の元で如月さんと共に勉強会をやる予定だったが、柚木さんが委員会の用事があるらしく中止となった。
そして俺は購買で買ったパンをかじりながらスマホと睨めっこを続けてきた。
画面に表示されているのは『クリスマス おすすめデート』である。
「イルミネーション……。ショッピング……。あとは……」
出てくるもの全て俺が行ってきたところとは真逆のところである。
過去に行ってきたところと言えばラーメン屋、ゲーセン……。
「後どこ行ってたっけ……」
頭を抱えながら頑張って思い出そうとするが、全く浮かんでこない。
だが少なくともデートとして行ける場所ではないということは明らかだ。
「どうした清水。そんな頭なんか抱えて」
「石橋……」
「もし暇だったらお前もちょっとこっち来てくれねえか? 話が盛り上がって収集つかなくなっちまって」
「別にいいけど、俺からも相談していいか? お前らの話が決着ついてからでいいからさ」
このまま1人で悩んでもアイデアなんて一切浮かばないだろう。
しかも1度もデートをしたこともない童貞がプランを決めるだなんて無理な話だ。
頼れる人間が近くにいるならば、遠慮なく頼るべきだろう。
もちろん羞恥心もある。
だが、本来の目的は柚木さんに楽しんでもらうこと。
自分の羞恥心を気にしている場合ではない。
「ああいいぜ! 任せろ!」
親指を立てて了承してくれた。
そして俺は石橋に足立と大塚と前田が集まっている場所まで案内されることに。
「いや! 俺は違うと思う!」
「……俺のハムストリングスが良いと言っているんだ」
「分かってねえなお前ら~。それがいいんだよ」
説明を聞いた通り、かなり盛り上がっている。
というより言い争っているという風に見えた。
「お前ら何の話してるんだ?」
空いている椅子を借りてきて、ちょうど足立と大塚の間に入り込む。
すると3人が声を揃えて言ってきた。
「「「野菜の中で何が1番エロいか」」」
「……は?」
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