第3話:希望の代償<キボウ・ノ・ダイショウ>
時の創造者が仕組んだ最初の歪み、ヴァージンが、人類の絶望を凝縮した姿でアストラル・ラボの地下から現れた。その巨大な姿は、時間の流れを歪ませ、施設全体を崩壊させようとしていた。
「ゼロ博士! ヴァージンのエネルギー反応、解析不能です! このままでは、施設が持ちません!」
アリアが叫ぶ。クロノ・ゼロは、もはや後がないことを悟っていた。彼は、タイム・ファクターをヴァージンに向けて放つ最終手段に出ることを決意する。
「アリア、タイム・ファクターのエネルギーを、すべてヴァージンに向けて収束させる! ヴァージンの時間を、停止させるんだ!」
しかし、アリアは戸惑った。
「そんなことをすれば、タイム・ファクターが暴走してしまいます! もしかしたら、この宇宙の時間を巻き込んで……!」
アリアの懸念は正しかった。クロノ・ゼロもそれは承知の上だったが、彼には他に選択肢がなかった。
「もう後戻りはできない! この歴史を、希望へと変えるんだ!」
クロノ・ゼロの叫びと共に、タイム・ファクターから放たれる光が、ヴァージンを包み込む。ヴァージンは悲痛な叫びを上げ、その巨大な体が少しずつ停止していく。しかし、ヴァージンが放った最後の絶望のエネルギーが、タイム・ファクターの暴走を誘発した。
まばゆい光と爆音と共に、アストラル・ラボは崩壊した。その瞬間、タイム・ファクターから、未来へと向かう二つの光が放たれた。
「……アリア、この光が、未来を……」
クロノ・ゼロは、そう呟くと、ヴァージンと共に虚無の彼方へと消えていった。
そして、衝撃的な真実が明かされる。
未来へと向かった二つの光。その一つは、カイトの持つペンダントとなり、もう一つは、リナの心臓の鼓動を司る、タイム・ファクターの力の源となった。
クロノ・ゼロは、タイム・ファクターを起動させる際、自らの記憶と意志を、未来を託す二つの光へと乗せたのだ。カイトは、クロノ・ゼロの意志を継ぐ者として、リナは、ヴァージンから人類を救うための、最後の希望として。
そして、クロノ・ゼロがヴァージンを停止させた場所、その地下深くには、彼の意志を継ぐ、最後の希望の機体が眠っていた。
そう、漆黒の戦闘機、エグゾフレーム・クロノスが。
この戦いは、未来へと続く物語の始まりだったのだ。すべては、クロノ・ゼロの意志と、彼が未来に託した希望の光によって、導かれていた。
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