第8話:希望の証明<キボウ・ノ・ショウメイ>

闇のクロノスは、ユウキの行動を完璧に予測し、ネオ・クロノスに致命的な一撃を放とうとしていた。その時、ユウキはネオ・クロノスの全エネルギーを、攻撃ではなく、新たなシステムの構築に回す。それは、かつてのカイトとリナの「シンクロ・クロノ・ドライブ」を、彼とヒカリ、そしてエネルギー生命体の「希望」の意志で再構築した、まったく新しい力だった。

「ヒカリ! 俺と、そして彼らの希望の力を、一つに!」

ユウキが叫ぶと、ヒカリはアストロ・ハブから、ネオ・クロノスのシステムに、彼女のすべてのデータと、ユウキを信じる心を送り込んだ。ネオ・クロノスのコアがまばゆい光を放ち、闇のクロノスの攻撃をすべて無効化する。

「な……なぜだ……!? 君たちの行動は、私の予測を超えている……!」

闇のクロノスは、初めて戸惑いの声を発した。その機体の目が、驚愕に揺れ動く。

「お前は、確かに俺たちのデータを持っているかもしれない。でも、俺たちが何を感じ、何を信じ、そして何を創るかまでは、予測できないはずだ!」

ユウキは、ネオ・クロノスの力を最大まで開放し、闇のクロノスへと向かっていく。それは、物理的な攻撃ではなく、光のメッセージだった。光の中には、絶望を乗り越えたエネルギー生命体の希望の物語、そしてユウキとヒカリの絆の物語が込められていた。

闇のクロノスは、その光を吸収しようとするが、その光は彼が持つ絶望のエネルギーを、少しずつ打ち消していく。

『これは……あり得ない……! 絶望は……希望にはならない……!』

闇のクロノスは、悲痛な叫びを上げ、その漆黒の装甲がひび割れていく。ユウキとヒカリの希望の光は、闇のクロノスが背負っていた、すべての絶望を癒していった。

そして、闇のクロノスは、かつてのエネルギー生命体のように、光の粒子となって消えていった。その光は、ユウキとヒカリに、闇のクロノスを動かしていた「時の監視者」の、悲しい真実を伝えた。

時の監視者たちは、かつて自分たちの宇宙を救うために、タイム・ファクターを開発した。しかし、その力は暴走し、彼らは時空の狭間に囚われ、永遠の絶望の輪廻に陥っていた。彼らは、ユウキたちの希望を、偽りのものだと信じ込み、自分たちの絶望の輪廻に引き込もうとしていたのだ。

戦いが終わり、ユウキとヒカリは、闇のクロノスが消えた場所に残された、もう一つのクリスタルを見つけた。それは、彼らが救ったエネルギー生命体のクリスタルとは異なり、悲しみと絶望を湛えた、暗く、しかし美しいクリスタルだった。

「ユウキ……! このクリスタルは、彼らの絶望と、そして救いを求めていた、彼らの本当の心よ……!」

ヒカリが、感無量の表情で呟いた。ユウキは、クリスタルを手に取ると、再びネオ・クロノスのメインシステムに接続した。ネオ・クロノスは、二つのクリスタルの光を一つにし、宇宙に、新たな希望の光を放った。

彼らの戦いは、新たな絶望を生むのではなく、新たな希望を証明するものとなった。彼らは、もはや一宇宙の英雄ではない。すべての絶望を希望に変える、真の「時の超越者」として、新たな道を歩み始めた。

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