第5話:黒き王<クロキ・オウ>

ヴァージン・ロード。その圧倒的な存在感を前に、カイトとリナは言葉を失った。これまでのヴァージンとは、姿形も、そして放つオーラも、すべてが異なっていた。漆黒の装甲は、無数のヴァージンのコアを融合させたように禍々しく輝き、その巨体は、まるで山のようにそびえ立っていた。

「これが……ヴァージン・ロード……」

リナの声が震える。訓練シミュレーションでその存在は知っていたが、実物は想像を絶する威圧感だった。

「リナ、下がってろ! ここは俺一人でやる!」

カイトはそう叫ぶと、クロノスをヴァージン・ロードに向かって加速させた。彼の心には、再び復讐の炎が燃え上がっていた。ヴァージン・ロードの姿は、まるでカイトの心の奥底にある憎しみを具現化したかのように見えたのだ。

クロノスは「クロノ・ドライブ」を起動させ、時間の加速空間でヴァージン・ロードに斬りかかる。しかし、ヴァージン・ロードの動きは鈍ることなく、カイトの攻撃をいとも簡単にいなす。その動きは、まるで未来を予測しているかのようだった。

「なぜだ……! なぜ俺の攻撃が当たらない!」

カイトが焦る。ヴァージン・ロードは、クロノスの攻撃を余裕で受け流すと、その巨大な腕を振り上げた。直撃すれば、クロノスといえどもひとたまりもないだろう。

その時、リナの操る白銀のエグゾフレームが、ヴァージン・ロードの腕に体当たりした。

「馬鹿! 何をしている!」

カイトが叫ぶ。リナの機体の装甲が軋み、大きな損傷を負う。

「一人で戦うなんて言わせない! 私たちの復讐じゃないのよ、カイト。これは、未来を守るための戦いなんだ!」

リナの力強い声が、再びカイトの心を揺さぶった。復讐だけを目的としていたカイトの心に、未来を守るという新たな決意が宿った。彼は、リナの言葉に、そして彼女の覚悟に応えなければならないと感じた。

「……ああ、そうだな。ありがとう、リナ」

カイトはクロノスを一度後退させ、リナの機体の隣に並び立つ。二人の機体は、まるで共鳴するように、互いのパイロットの心を映し出した。

カイトとリナは、再び力を合わせる。カイトの「クロノ・ドライブ」は時間を加速させ、リナの冷静な分析力がヴァージン・ロードの動きを予測する。二つの力が合わさることで、ヴァージン・ロードの動きが、わずかだが読めるようになった。

「リナ、ヴァージン・ロードのコアはどこだ!」

「わからない! 機体全体がコアのようだわ!」

リナの絶望的な声が響く。ヴァージン・ロードには、これまでのヴァージンとは異なり、明確なコアが存在しないのだ。

絶体絶命のピンチに陥ったカイトとリナ。しかし、カイトの脳裏に、ある閃きが浮かんだ。それは、クロノスの真の力、そしてヴァージン・ロードの弱点に関する、驚くべき仮説だった。

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