第4話:時の超越者<トキ・ノ・チョウエツシャ>

カイトの心がリナの言葉によって解き放たれた瞬間、クロノスの機体は青白い光を放ち始めた。それは、怒りや憎しみといった負の感情とは異なる、澄み切った輝きだった。

「これは……まさか!」

管制室の教官が驚愕の声を上げる。クロノスのテストデータには存在しなかった反応だった。機体は、まるでカイトの意志に応えるかのように、その性能を飛躍的に向上させていく。

「リナ、こっちへ!」

カイトは通信でリナを呼び寄せた。彼の声には、以前のような焦りや苛立ちはない。リナはすぐにカイトの意図を汲み取り、ヴァージンの攻撃をかわしながらクロノスの隣へと機体を寄せた。

「カイト、一体どうするの?」

「俺のクロノスは、時間を加速させる。リナ、俺に合わせてくれ!」

カイトは、クロノスに搭載された特殊システム「クロノ・ドライブ」を起動させた。このシステムは、本来パイロットの精神を極限まで研ぎ澄ますことで、周囲の時間の流れを相対的に遅く感じさせるものだった。だが、カイトとクロノスの共鳴により、それは物理的な現象へと昇華されようとしていた。

クロノスを中心に、わずかに空間が歪む。ヴァージンたちの動きが、スローモーションのように鈍化していく。

「すごい……ヴァージンが、止まって見える!」

驚きを隠せないリナに、カイトは冷静に指示を出す。

「今だ!一気にコアを叩く!」

カイトとリナは連携して、鈍化したヴァージンの群れの中を駆け抜けた。クロノスは光の剣で、リナの機体は白銀のナイフで、次々とヴァージンのコアを正確に破壊していく。二人の息はぴったりと合い、まるで最初から一つの機体を操っているかのようだった。

その圧倒的な連携と力により、大規模なヴァージンの群れは、短時間で壊滅した。戦場は静まり返り、二人の機体だけが、月明かりの下に佇んでいた。

「やったな、カイト」

リナが安堵したように微笑む。カイトもまた、初めて心からの笑みを浮かべた。しかし、その時、壊滅したヴァージンの群れの中心から、巨大な影が立ち上がった。それは、他のヴァージンとは比較にならないほどの威圧感と、漆黒の装甲を持つ「ヴァージン・ロード」だった。

クロノスとヴァージン・ロード。漆黒の機体同士が、静かに、しかし激しく対峙する。

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