「できた！できたよ、エリナ！見てこれ！」

　リリィが目を輝かせながら持ってきたのは、ただの木箱のように見えるものだった。

「なんだ、これは？」

「ふっふっふー。名付けて『全自動ひんやりボックス』！アッシュが残してくれた『冷気の概念』を付与した魔石を組み込んだんだ。これで、いつでも冷たいジュースが飲める！」

　リリィは、アッシュがいない間も発明に夢中だった。彼の【概念再構築】という前代未聞のスキルは、彼女の創作意欲を無限に刺激したのだ。

　アッシュが書き換えた「聖なる温水」を効率よく循環させるための自動温度調整システム。

　農業ゴーレムを遠隔操作するための通信機。

　そして、彼女が今、最も情熱を注いでいるのが――

「――空飛ぶ船、だよ」

　リリィは、巨大な設計図を広げて見せた。そこには、帆船に翼がついたような、夢のような乗り物が描かれている。

「アッシュが『浮遊の概念』を付与した船体に、ボクが開発した魔力推進エンジンを積めば……きっと、空を飛べるはずなんだ！」

　彼女は、アッシュが帰ってきたら、この設計図を見せて驚かせてやろうと心に決めていた。

（アッシュと一緒なら、どこへだって行ける）

　空の彼方を見つめるリリィの頬は、ほんのり赤く染まっていた。彼女の淡い恋心は、壮大な発明品と共に、アルカディアの空へと羽ばたこうとしていた。

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