番外編③:ある聖女の後悔と再出発
厄災が去り、王国は復興に向けて歩み始めていた。
黒幕であったアーサー王子は幽閉され、兄である王太子ギルバートは、アッシュ追放の責任を問われる形でその地位を失った。
アイリスは、聖女として、国の立て直しに奔走していた。
以前のように、ただ崇められるだけの存在ではない。彼女は自ら街に出て、民の声を聞き、復興作業を手伝った。その姿は、人々に真の希望を与えた。
そんな彼女の元に、一通の手紙が届いた。アルカディアからだった。
『アルカディアと王国との間で、正式な国交を結びたい』
アッシュからの提案だった。アルカディアの豊かな資源や作物を王国に提供する代わりに、王国が持つ様々な書物や技術を提供してほしい、という内容だった。
それは、一方的な救済ではなく、対等なパートナーとしての提案だった。
「……ありがとう、アッシュ」
アイリスは、手紙を胸に抱きしめた。彼は、最後まで自分に道を示してくれる。
数週間後、アイリスは王国の正式な使者として、再びアルカディアを訪れた。
そこで見たのは、以前よりもさらに発展し、多くの人々の笑顔で溢れる理想郷の姿だった。
「ようこそ、アイリス」
笑顔で出迎えてくれたアッシュ、そしてエリナとリリィ。彼らの間には、揺るぎない絆があった。
アイリスは、もう嫉妬など感じなかった。ただ、深い尊敬と、償いの気持ちがあるだけ。
(わたくしは、この国を、あなたが守ってくれたこの国を、もっと素晴らしい場所にしてみせます)
強く、美しく成長した聖女は、アッシュへの想いを胸に、自らの国で、再出発を誓うのだった。
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