物語世界の迷惑(旧題:没アイデアの迷宮)

青銅正人

擬人化

 十年ほど前に大規模な擬人化災害が起きて、日本では擬人化表現は禁止された。擬人化を行うと擬人化災害特別措置法で罰せられることになっている。

 それでも擬人化災害は後を絶たない、本当にうちの民族の業は深い。


 緊急通報を受けて有明に出動した我々を待っていたのは、工場群だった……。

 蒸留塔のある化学工場が身?をくねらせながら、クレーンの立ち並ぶ鉄工場を、ぶっとい配管でペシペシ叩いていた。そのそばでは、集塵ダクトがある木工場?が飛び跳ねていた。背後で海に手?を突っ込んで水を掻き回してる巨大タンクの集合体がいた。なんかこいつら女子高校生っぽい……。

 周辺では二本足で走る犬猫馬が逃げ惑っていた。


「どうすんのこれ?」

「無機物は、俺チョット」

「エンジンで動いてないものには、萌えない」

「モフモフじゃ無いと……」

「何言ってんですか! この機能美とやっつけ拡張の絶妙なバランス、素晴らしい」

「じゃ、今回は君に任せた」

「任されました! カードキャプチャ!」

 工場群がキラキラ光るエフェクトに包まれると、数枚のカードになって、部下その4の手のひらに乗っていた。

 うわ、こいつさっきの台詞本気で言ってたんだ、と思っていると、奴はいそいそとカードフォルダにカードを納めていた。


 もう分かったと思うが、擬人化されたものをカードに回収する異能持ちの集団が、俺たち自衛隊擬人化物回収部隊だ。

 隊員が回収できるブツは、各人が真に萌えるものに限られている。だから特殊性癖の持ち主はいつでも大歓迎だ。

 どうだ君も入隊しないか? 今なら、特製フォルダが十冊付くぞ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る