妹王子と兄令嬢~田舎令嬢に転生した兄貴、妹を探して異世界で成り上がる~

ふぃる汰

第1話 夏山兄妹と自称女神



 ……。



 …………。



「う、うーん……」



 ……ちゃ……!



 にー……ちゃ……!



「にーちゃ! ひゅーがにーちゃ!」



「うわっ!! なっなんだ!? 敵襲か!?」



「あっにーちゃおきた!」



「妹よりお寝坊さんとは、情けないですねにーちゃは」



「へっ……?」



 目が覚めると、そこはひどく眩しい真っ白な世界だった。

目の前には、オレの顔を覗き込む妹と……



「えっ……誰?」



「なつやまみかん! さんさい! ひゅーがにーちゃのいもーと!」



「いや美柑は知ってるから、元気に名前言えて偉いね……って、そうじゃねえ! そっちの女の人だよ!」



「あ、ワタシですか? ワタシは女神で~す。年齢は……ヒ・ミ・ツ☆」



「め、女神……?」



 何言ってんだコイツ、自分のこと女神って……絶対ヤバい女だな。確定演出。



「美柑、オレの後ろに隠れてろ」



「わーい! にーちゃとかくれんぼだ!」



「ちょっとちょっと、不審者扱いやめてくださいよ~。本当に女神なんですから。ここもほら、天国っぽいでしょ~?」



「天国って……」



 自称女神のヤバい女に言われて周囲を見渡す。

さっきは気付かなかったが、ただ白いだけじゃなくて地面が少しフワフワしているような……それに照明もないのに妙に明るい。

たしかにこんな所、来たことが無い。



「か、仮にここが天国でアンタが女神だったとして、なんでオレと美柑はこんな所にいるんだよ」



「そりゃ勿論、お二人とも死んじゃったからですよ」



 …………。



「へ? し、死んだ……?」



「夏山彪牙さん・享年15才、夏山美柑さん・享年3才……お二人は交通事故でお亡くなりになりました」



「おなくなりー!」



 その時、寝起きでぼんやりしていた脳みそがようやく覚醒した時のような状態になり、直前の出来事を一気に思い出す。

青信号を渡っていたオレと美柑の横から、信号無視のトラックが突っ込んできて、オレは咄嗟に美柑を抱きしめて……



「……トラックとぶつかった所までは覚えている。その後、どうなったんだ?」



「彪牙さんはトラックに弾き飛ばされて道路脇の標識に刺さって頭が真っ二つになりました」



「エグッ!? オレの最期エグすぎるだろ……!」



 ここが本当に天国というのなら本当に死んでるんだろうとは思ったが、まさかそんなエグい死に方をしていたとは……



「めがみさま、みかんは? みかんはどうなったー?」



「美柑さんは彪牙さんが庇ってくれたので直撃はしませんでしたが、道路に投げ出された後にトラックのタイヤでペチャンコになりました」



「うわあああ妹が轢き潰されて死んだとか聞きたくなかったー!!」



「あははは! みかんペチャンコー!」



「なんでお前は楽しそうなんだよ」



 とはいえ、じゃあ本当にオレと美柑は死んじまったってことか……



「はあ、これからどうすれば……」



「てんごくっておいしーごはんあるかなー? ひゅーがにーちゃのハンバーグとか!」



「オレのハンバーグはオレが作らなきゃ無いだろう」



「残念ながら彪牙さんはもう火葬されて骨になってしまったのでハンバーグにはなりませんねえ」



「いやオレの肉で作ったハンバーグって意味じゃねえから」



 まあ、一応地獄じゃなくて天国っぽいところに来れたわけだし、それなりに善良な市民のまま人生を全うしたってことなのだろうか。



「いや、全うはしてないか。人生半ばで唐突に終わっちまったもんな……」



「ひゅーがにーちゃ?」



 心配そうにオレの顔を覗き込んでくる美柑の頭を撫でる。

オレよりもむしろ妹の美柑の方が可哀想だ。

たった3才で人生が終わってしまった。



「お二人とも、まだ生きていたかったですか?」



「そりゃあな。90才で老衰とかじゃなくて15才で事故死だぞ。まだまだこれからだったよ」



「みかんも! ほいくえんでつくったどろだんごもっとツルツルにしたかった!」



「未練がかわいいなおい」



 天国、泥とか無さそうだもんなあ……てかこのフワフワした地面なんだ? マシュマロ?



「ではそんなお二人に、それなりに権限を持った女神であるワタシから新たな人生を授けましょう」



「新たな……」



「じんせー?」



「そうです、新たな人生です。お二人にはこれから、前世とは別の世界……異世界へと転生してもらいます」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る