第3話女神達の邂逅!?

”そもそも、何で? ”

 

 と思いミーちゃんに、


”どうやって死ぬ前に俺を止めに現世へ現れたのか?”


 聞いてみれば、


「あのね〜!背中に羽根のはえたお姉さんに“お兄ちゃん”を助けてあげるのよ!!」


 と“兄ちゃん”を見つけたら逃げるように言われたのとだという。


”誰だ?そいつは?”

“ヘーラー妃、又はアテナの使い?”

「イーリス?それともニケ?あたりか?」


 女神の名前が口に出てくるが……記憶に希臘ギリシャ神話の女神の名前が出る理由がはっきりしない!?


“……八雲さん助けて!”


 心のなかで悲鳴をあげつつ。


 こんな、悪事を働くのは、


”万年童顔、永遠の仮性人カセイジンのあのクソガキ位だ!”


 変に思い出す!?

 深層意識にまた俺が置いてけぼり?


「なあ、大口の、お前……これからどうする?」


 牛頭さんに鬼なのに人間味のある困り顔をさせる。


“俺って何者だろう……?”

「俺って、大口っていうんですか?」


 逆に質問に質問で返してしまい。


「そこからかよっ!?」


 余計に困惑させてしまう。

 早い話が、俺は妖の類で、


「大口のなんちゃらって。」


 云うらしいが魂魄はどうであれ、ここ千年は人間として、”この世の不条理”に曝されて生き死にを繰り返している。

 牛頭さんは、


「あっ一!」


 息を漏らして、右手で頭を掻きながら、


「あのな、イザナミ様から根の国にお前を連れて来いって言い渡されてるんだけど?行くか?」


 と尋ねられた。

 冥府の女主にそう言われて、拒否れる立場にない俺は、


「わかりました。伺います」


 と即答するしかない。

 さっそく、三途の川に現れた葦船に乗せられ、ミーちゃんは牛頭さんに預かってもらう。


「兄ちゃん、いってらっしゃーい!」


 牛頭さんに抱きかかえられ、ミーちゃんが手?前足を振る。

 その前足に手を添えて、牛頭さんにも手を振られながら見送られた。


“牛頭さんも、猫好き?”


 意外な事実を目にしながら、流れのまま、薄暗い常に夕闇に近い空が続く川を葦船は進んでいった。

 根の国、原初の死のイメージが反映された世界。


“あの世というより、どこか?”

“この世と地続きのような世界。”


 地の奥底とも遠い海の彼方とも……、


“どっちみち別次元だけど。”


 最初は、川幅も広く両岸まで見渡せなかったが次第に急流になったり、深く、流れ静かな瀞の川瀬に設けられた船着き場に葦船はとまり、恐る恐る朽ち果てそうな板場に足をのせ、一歩一歩、慎重に根の国に辿り着いた。

 砂上の道を見つけて、


「ここを進むしかないのか?」


 独り呟けば、

 その言に応じるように 、


"こちらへ……!"


 といつの間にか右端に土色の少し小柄の女性の人型が地面から隆起した。

 目と思しきところに小さく穴が穿たれ、灯のような光が漏れている。

 無表情でも、どこか愛嬌のあるような顔に女官型埴輪が思い浮かんだ。

 導かれるまま、歩を合わせるというより、使いの埴輪さんが地を滑るように進むのを追いかけた。

 一際、暗い暗天のもとに茅葺屋根の大神殿の前に通される。

 どこか、出雲大社の社を想起させる社殿の周囲は、人影はなくとも玉響タマユラに明滅を繰り返す光球オーブが幾重に現れ俺を囲うように漂う光景。

 意外にも威圧感はなく、光球オーブの中には、俺へ、


”久しぶりー!”


 と明滅でメッセージを送ってくるものまである。 


“ここに、考古学者を連れて来れたらな〰!”


 と感慨深く眺めていると、


「ニュクティーモスちゃーん♡」


 甘ーい声で大地を震動させ、


”ユッサ!ユッサ!”


 と現れた。

 栗毛色の髪を後ろに結った場違いな亜麻リネンのキトンに母性を溢れんばかりに包んだ女性がいきなり、俺を抱きかかえ、そのふくよかな胸で圧搾した。

 肺から酸素(あの世にあるのか?)が欠乏していくなか、初めて”真の死”を覚悟した。

 慌てふわめきながら、やっと、場違いな西の大地母神は、俺を神殿前の白州へ開放してくれた。

 肺に酸素が戻り、息も絶え絶えに、


カアちゃん、俺を殺す気かっ!!」


 怒号で返事をする俺も親不孝だが、俺を根の国=冥府で事故死させかける……養い親って、


“どうなのっ~~!”


 と叫びたくなる!?

 だが、愛ちゃんことケンジ君よりも低い声で、


「おいっ!お姉さんだろっ!?ルァッ!!」


 と脅され……、


「お姉さま、すみませんでした〰!」


 と心をこめて、土下座した。

 やっと、怒気を抑え納得して、


「ごめ〜ん、三千年もー!ご無沙汰だったじゃない?」

「ついっ……、てへペロ♡」


 のポーズ、


――すでに死語を死後の世界で口にする原初の母を前に……私はどうツッコミすれば、……いいのだろうか? ―――


 イタイ養母へ恐くてツッコめない息子の苦悩に根の国が【氷獄コキュートス】じゃないのに、


“ピュ〰ル・ル・ル〰〰!”


 吹く寒風……に凍え氷結する。

 一瞬でも永劫に近い沈黙の中、姿を現した貫頭衣に羽衣を纏った女性。


“醸し出す雰囲気から、救いの女神様だ〰!”


 思わず拝み涙するニュクティーモスという名前らしい大口。


”イザナミ様だ!”


 と悟れば、


「数千年ぶりの親子のご対面をここで祝して、挙げたいんだけどっー……!」

「ゲーちゃん、さー!」

「あんたの息子の誰か?がー!!うちのシマでヤンチャしてくれたか?」

「答えてっー、くれない!と女媧ちゃんと一緒に抗議しちゃおっかっなー!!」


 とレディース感たっぷりのメンチたっぷりの抗議!

 本気マジへこむ養母……高位神、しかも、女神同士のバチバチのメンチの切り合いに俺は、震えるしかなかった。

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