EP5(4)

犯人達は、かなり焦っていた。正直言って選択を間違えたと思っていた。目の前のこの男は情緒不安定で撃ったことを狂気的に自己を責め立てたかと思えばけろりと仕方ないですよね、といった顔をするのだ。とはいえここで捕まれば2度と塀の外には出られないだろう。もうどうにかして解放された仲間達と共に逃げる算段を皆脳内で立てていた。しかしまぁ、こんな事を仕出かす人間だ。同じ犯罪者、テロ犯とはいえ自己の未来を考えて司法取引したあの幹部とは違う。短期決戦には向いているが長期は向いていない。一般人1人を人質に取り、警察と大企業を相手取って大騒動を起こせても次の一手は最悪手。一気に形成逆転される。


タカギはイライラしていた。皆、逃げることばかり考えているようだったからだ。どうしてだ、警察はうんと言ったぞ。そうだろう?

しかし、タカギの想いとは裏腹に逃げる、よりも投降する、事を考え始めた者もいて崩壊していた。

「無理だよ……」

隣に座っていたミサトにしか聞こえないような小さな声でレイカは呟いた。ミサトはレイカの顔を覗き込んだ。レイカの顔はかなり青く、辛そうだったが他の犯人の男達は気づいていないようだった。

ミサトは一瞬目を閉じて、息を吸い込み、吐く。

「立って」

ミサトはレイカを支えて立つ。

「おい!タカギ。レイカがもうダメそうだ。ゴメンだけどあたしらはもう投降するから。とゆーかさぁ!期限2日ってバカじゃねぇの?」

男達は騒然とする。梛と瞠の2人も、瞠に付けられた盗聴器から聞いている警察の面々も。

「あたしは本気だ。もう懲り懲りだ。ヴァルキリーに所属した時点で間違いなんだよ、もうあたしらに平穏な日々なんかねぇよ。大人しくムショで暮らした方が幸せだろ。衣食住あるんだしさ」

タカギは、俯いて震えていた。

「うるせぇ、うるせえ、うるせえ!ざけんじゃねーよここまできて投降?バッカじゃねーの?」

タカギは梛から奪ったM8045をレイカとミサトに向ける。

あ、これで撃たれたら普通にキャリア終わるな。と既にほぼ終わりかけのキャリアを心配する梛だった。

梛はゆらりと立ち上がる。拘束をとっくに自分で解いていたのだ。梛はスラックスの裾を捲り、取り出す。犯人らに差し出したベレッタ2丁よりも小型のピストルだった。

「唯川さん、動かないで、出来るだけ伏せて」

梛は瞠に、いや瞠の縛られた結び目に照準を合わせ、発砲する。その弾はそのまま紐の結び目に当たり、紐が外れた。

「タカギ、手を挙げて武器を捨てろ。今僕が撃てば確実に弾はお前の心臓に直撃する」

その異次元の射撃能力に思わずタカギは腰を抜かしてその場に座り込んだ。しかし、依然震える手で銃を構え続けた。

「お前、撃てるもんか!あの精神状態でまた人殺したら今度こそお前全部終わるだろ」

梛は銃を握り直し、しっかりとタカギに照準を合わせた。

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