五
比叡山は古くは日枝の山として山岳信仰の対象とされ、京の都の鬼門に位置することから最澄が延暦寺を創建した。
比叡山へと続く道をゆっくりと行幸する帝の牛車を警護する新田義貞らの軍勢。京の都からは距離的にはさほど遠くはないのであるが如何せん歩みが遅い。
「サチ、退屈か?」
カヤトが手持ち無沙汰のうちを気遣う。カヤトの言葉にうちは首を横に振る。
「比叡山ってカヤトのおうちでしょ。楽しみだよ」
うちの言葉にカヤトは苦笑いをした。
比叡山へは無事到着し、うちとカヤトは新田義貞らの軍勢から離れる。比叡山の山道で地蔵と何かを話すカヤト。カヤトは式神だから地蔵と話すことができるんだろうなと思っているとカヤトが話す内容が少しだけ聞こえた。
「⋯⋯⋯⋯か。でも、それだと⋯⋯⋯⋯サチは戻れな⋯⋯⋯⋯⋯⋯ない⋯⋯⋯⋯」
お地蔵さんとの話題はうち?
ひょっとして、うちは令和には戻れないの⋯⋯。
お母さん、お父さん⋯⋯。
うちが悲しそうな顔をしているとカヤトが声をかけてきた。
「この先だ。さあ、行こう」
うちは頷き山道を登っていった。少し歩いたところでカヤトが歩みを止めた。
「さっきの地蔵が目印だと思ってくれ。オレとはぐれたら、待ち合わせ場所はここにしよう」
カヤトはそう言って例の不思議な刀を抜いた。目の前の景色がアナログの世界へと変わって⋯⋯。
鬼だ。
鬼。
しかも、たくさん。
「驚いたか? ここは鬼門だからな。鬼だらけなんだよ」
カヤトは苦笑いをしながら少し歩く。うちもカヤトについていく。
「そこの裂け目から鬼が出てきているのがわかるか?」
カヤトはそう言って刀の切っ先で一点を指す。
あっ。
鬼が出てきた。
うちはカヤトの言葉に頷く。
「あの裂け目はね。こっちと向こうの扉のようなものだ。オレはその扉を開いたり閉じたりする式神。扉を閉じるのは
カヤトがそう言って刀を裂け目に突き刺す。すると裂け目が消えていき、刀が突き刺さった状態になる。
あ、ドアとカギだ。
ふうううん。
うちが頷くとカヤトは刀を引き抜く。すると裂け目が復活する。
「この扉って必要なの?」
うちが素朴な疑問をぶつけるとカヤトは苦笑いをする。
「人間にとってはない方がいいのかもしれんが、そういうわけにもいかないんだよ」
その後、帝が比叡山に籠るというので、うちらも比叡山に滞在することになった。官軍が比叡山に移動したことで京の都は足利高氏の軍勢によって占領され、足利高氏は光厳上皇を奉じて京都東寺に入り、比叡山の後醍醐帝と東坂本に本陣を置く新田義貞の軍勢と睨み合う状態となっていた。
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