第3章
第3章 カイロスの間
私は ふと……目を開けた
アーチーの 銀の髪
そして彫りの深い綺麗な顔だち
彼は安心しきったように ぐっすり寝ている
私は蜜に寄せられる蝶のように 彼の唇に つ……と口付けていた
「……」
あたたかいアーチーの体温
そしてふんわりとした唇
そして吐息
「ん……」
身動ぎするアーチー
「お前……」
その腕が 私を慈しんだ
「お前からとはな……」
それは喜びにみちていて その開いた目に 私が 宿る
そう魔法陣の 中に潤んだ艶が 見える
そのままアーチーは 私を抱き込む
お前に会いにいこう?
え?
わたし?
「そう……お前だよ」
ここにいるわよ?
「は……違う……」
彼は楽しそう
お前の 肉体だ!
カイロス時空に 封印されている
お前が 自分を 閉じ込めたんだよ
「どういうこと?」
「いい……今は知らなくて……会えば戻る」
うーん?
でも
なんだか アーチーに 逆らう気は失せていて
素直に従える自分がいた
そして 起き出すと 2人は連れ立って 手を取り合い
城の 回廊を 抜ける
その柱郡には カイロス神の 顔や クロノス神の顔が
彫刻され
金銀の 箔の貼られた 紋様が 彫りつけてあった
それはアーチーの 身体を 食らっていた あの紋様だ
そして
ゴト
搭の 石戸を 引いて
後ろで締める
中は真っ暗
遥か上に 煉瓦の縁の 窓
アーチーは 懐から 何かを取り出す
「開け」
唱える
ぽ……
鈍い光……球体?
「水晶?」
ああ……魔法が込められている
カイロスの間へ案内するものだ
アーチーは 搭の 内側を沿う石段を かつ……と 上がった
「おいでサニー」
優しい声
あの高圧な気配はきえてる
「うん……」
カツン……カツン……
靴底に 張られた金属と 石段が 硬い音を響かせた
ぽ……その水晶の光が
搭の壁に 吸われる
アーチーが 手袋の 手を伸ばした
きゅ……
壁を透過する
そして
何も無い壁を 抜けると 横道が伸びていた
乾いた気配
そして目の前に 砂時計
かなり大きい
かた……
さら……
ひっくり返すと キラキラと砂が落ちる
「カイロスの間にいる時間は 20分いいね?」
「う……うん」
さら……砂は落ちていく
ぶん……
アーチーが 壁をに触れると ぐにゃりと 彼の身体の線が歪む
そして吸い込まれた
私も 手をつながれたまま
ぶ……んと とけた
きーん……
澄み切った清浄な 広間
中央に カイロスの像
そして大きい
人が入りそうな 結晶
なんの石?
触れてごらん……
アーチーが 私を誘導する
私はそっと触れた
すると結晶の中に私?
あ……
お前だ……
お前が己を 封じた
「きゃ……」
凄い勢いで 記憶が 吸い出される
そしてもう一人の 私が 私の 時空と重なった
その途端
どん……と土埃
カイロスの間の 壁が打ち砕かれた
「殿下……そろそろお聞き分けを!」
そこにいたのは白い顔の男
異様なまでに細い
漆黒の ローブを纏い
片手が私を 向く
でも私は そんな事かまってられないほど 心の嵐に 叩かれていた
そして心が裂かれる程の痛み
お兄様!
「お兄様」
涙が後から後から
ドレスを ぬらした
「サニー下がれ」
アーチーが レイピアを 抜く
アーチー?お兄……様
嘘?
好きよ大好きよ?
ねぇ?
アーチー?
「死んだ方がマシでしょう?王女殿下?」
気味が悪い程平たんな声
でも耳に入らない
「いやよ!アーチー!」
その胸には王家の 紋様の ネックレス
きっと 血の呪いだ!
アーチーーーーーー!
ど……ん!
私の足元から 黒い渦
「よせ!サニー」
アーチーは 男の 剣を はらいながら
声を飛ばす
ど……ん
カイロスの像の目から血の涙
そのまま……あのまま朽ちていればよかった!
愛してるのに男として抱かれたい人が異母兄?
「いやよ!」
アーチーが 片膝をつく!
「サニー!」
圧されてるのに 兄は手を伸ばす
その手を 黒い渦が食らう
そして服を 剥がして
あの紋様を彫りつける!
「いや!だめよ!とまんなさい!」
渦に命じる
だが 奔流は 唸って段々とアーチーを飲み込む
そして男……間者も 渦は食らった
「がぁ」
男の喉から胸を渦は捻り食らう
そして手足をねじ切る!
血も出ない
それすら 渦が呑んでいく!
アーチーの 身体が私を 抱きすくめた
「落ち着け……いいから!」
その美しい顔にまで紋様が 伸びる
そして爛れた肌が 皮膚呼吸すら失う
がく……
「だめ!」
私は倒れる兄を抱きしめた
そして 兄の唇を 貪った
アーチーの息が無い!
いやよ!
そのまま 肌を重ねる
き……ん
涙が落ちる度アーチーの肌が濡れる
そのまま 一緒に死にたい
そして ドレスを ぬいで
肌で触れた
「……ああ……お兄様……」
そして
カイロスに祈りながら
レイピアで喉をつこうとした
その手を アーチーの手が止める
勝手に殺すな!
サニー!
アーチーが うめいて
レイピアをもぎ取る
「お前は!」
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
何度も謝罪
「いい……いいんだよサニーあの記憶は死より重い!僕でも耐えられなかったさ」
そして
私の肌に 口付ける
そのまま倒される
「お前だけは諦め無い!王位などいらない」
そしてアーチーの手が私を撫でる
そのまま……そのまま重なる
「お前は異母妹である以前に 最愛の女性!だから泣かないでくれ」
2人は肌の温もりのままに語る
罪なのは知っている
禁忌であるだろう?だからなんだ!
このまま離れたくない!
き……ん!
2人の身体はアーチーの自室へと跳ぶ
アーチーの肌は熱く そして滑らかだ
私も彼に口付け
そのままベッドへ倒れ込む
そしてアーチーの手が私の足を滑ろうとしてピクとかたまる
は……すまないな
止まらないかもしれない
「いいのよ」
そのまま2人の愛は重なりあっていく
結ばれようとする 瞬間に バタンと 扉を 開く音
「母上!」
汚らわしい!
その手には 短剣!
そして!家臣がアーチーを剥がしていく!
王妃は 私に 短剣を 振り上げた!
「お前さえ居なければ!」
「やめ……ろ!」
アーチーの叫び!
ザッ!
マットレスに 短剣が たった
私はベッドから滑り降り
アーチーを捕らえる家臣達に 魔法を 見舞った
「逃げよう」
2人の手が結ばれ
駆け出す!
お待ち!
王妃の 呪う声が 背をうった
だけどかまわない!
時をかける!
瞬間を越える
2人の姿は王宮から消えていた
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