50品目 大人の「お子さまランチ」(前編)
さて。学食側が指定したその日になったぞ。
ラスト50品目となる、"裏メニュー"とやらが今日拝めるのだ。私とさと子はいつもの二人テーブルについて、品が到着するのを待っていた。
「なんか向こうから持ってくるって言ってたよ? 学食の人たち」
「ふうん?」
いつもはカウンターで生徒が品の載ったトレーを受け取る訳だが……。最終メニューについては何かと例外が多いらしい。
またお腹を空かせてくるようにとも事前に連絡を受けていたので、朝食はバナナ一本だけにしておいた。
(どんなの来るんだろうな……?)
さと子が先輩とかから聞いた話だと、けっこうボリュームのあるメニューなんだったか……。"キング牛丼"と同じくらいの量とか言ってたな。
(まさかね……)
YouTubeとかでたまに見かける品だが……あれは確か1キロを超えていたはずだ。そんなデカ盛りが高校の学食なんかで出てくる訳……。
「あっ、来たよ純ちゃん!」
「なっ、何だあれは⁉」
学食スタッフの方が運んできた品を見て、私は思わず目を疑ってしまう。巨大なプレートの上には、いくつかの料理が並んで盛りつけられていた。
旗の刺さったチキンライス。手のひらほどはあろうかというサイズのハンバーグ。大盛のナポリタン……。
そしてプレートの横には、最後に市販のプリンが1個ちょこんと置かれた。
「じゅ、純ちゃん……。これって……」
「ああ……」
出揃ったテーブルの上を確認して、私たちはメニュー名を確信する。二人そろってその名を口にした。
「「――『お子さまランチ』だっ!」」
そう、最後のメニューは『お子さまランチ』――。運んできてくれた人が教えてくれたが、総重量はジャスト1キロにもなるそうだ。
「1キロって……」
料理で使う単位じゃないだろ。確かすき家の"並盛"1杯分が……300とか350gとかだった気がするぞ。
私より食べるさと子も、まったく同じプレートを目の前にして戦慄している。あのさと子が震えるという点から見ても、いかに常識外れのボリュームであるかが窺えようというものだ。
(これが伝説の"裏メニュー"か……ッ!)
知る人ぞ知る隠された品であることにも納得がいく。こんなものホイホイ出してなどいられるはずがないからな……。
制限時間はお昼休みが終わるまで、とのこと。まあ、高校の学食だしそうなるわな……。
「だいたい30分ちょいってところか……」
学食内の掛け時計を見ながらで、私は再度眼前のプレートにも目をやる。ひと品ひと品の見た目は非常においしそうで食欲をそそるのだが、集結するとすごい迫力だ……。
「なんか今までの集大成って感じだね……。見てよ純ちゃんこれ」
チキンライスは、文化祭前に食べた『オムライス』の中身だ。刻んだ鶏肉に玉ねぎ・グリーンピースの具材を、トマトケチャップで炒めたもの。
ハンバーグは『ロコモコ丼』以来の登場。あの時と同じように、ご飯に合いそうなデミグラスソースがたっぷりとかかっている。
そして『ナポリタン』。初めて食べた時は、まだ6月に入ったばかりだった気がするなあ……。
「プリンは初めてだけどね。これは学食が作ったやつじゃないね」
「ああ」
おそらく売り上げNo.1のシェア率を誇るのであろう、大手メーカーから出ているプッチンするタイプのプリン。よく3連パックでスーパーなどに並んでいるやつだ。
このよく見かけるカッププリン1個と比較すると、隣のプレート料理たちがいかに大量であるかがわかる。デザートのプリンが対比物として機能していた。
「……って、デカ盛りの構成を批評している場合じゃないぞ!」
昼休みが終わるまでにいただき切らなければならないのだ。ここまでたくさん作ってもらっておいて、おのこしなど決して許されることではない。
「よぅし! いこうか純ちゃん!」
パンと威勢よく手を合わせるさと子。私も彼女に倣って合掌し、二人同時に「いただきます」をした。
まずは『チキンライス』からだ。刺さっている爪楊枝の日本国旗をちょいと取り去ってから、お箸でひと口大をいただいた。
(……うん。相変わらずうまいよ……)
うまいけど……。量が多いよ、シンプルに。間違いなくこの『チキンライス』だけで満足できるボリュームがあるぞ。
ご飯のおかずが欲しくなったので、次は隣の『ハンバーグ』へとジャンプ。よく形を崩さずに焼けるな、こんなサイズのひき肉料理……。
(……おお)
こっちもデミソースが素晴らしい……。肉汁もたっぷりで、ひと噛みするごとに旨味のスープがジュワッと広がった。
「おいしいねえ~。ありがたやありがたや……」
さと子は私に比べてまあ余裕があるようで、時折感想などを挟みながらうんうん頷いていた。『ナポリタン』に移る様子を見て、私も品を変更する。
この『ナポリタン』も、単品で登場してきた時と同じ。ソーセージ・ピーマン・玉ねぎの、絶対外さない王道な組み合わせの具材だ。
(ああ……。さと子と喫茶店の話とかしたっけな……)
確か名古屋の話題がちょっと出たはずだ。私がコーヒー飲まないって話をしたのも、この日だったかな……。
……などと懐かしがっている場合ではない。ふと時計に目を向けると、もう開始から10分が経過しようとしているではないか。
(この炭水化物と肉のわんぱくプレートを……あと20分で……!)
いけるのか――? いわば超ボリュームな"大人のお子さまランチ"との勝負が白熱していた。
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