くだらないプライド

 燕谷という人物は、七海には頼れない以上、自分で何とかしようとして、面白い動きをしている。

 流石にこのまま放っておけばどうなるか分かったものじゃない。すぐに助ける事にした。

 

「ったく……おい燕谷とやら! そこ動くな!」

『だ、誰!?』

「いいから! エマージェンシーボタンを押す!」

『わ、わかった!』


 声をかけて燕谷の動きを止める。

 その間に燕谷の後ろ側に回り込み、エイダ共通規格のエマージェンシーボタンを探し当てる。

 装甲と同じ材質の蓋で隠されている小さなボタンだ。小指でギリギリ押しこめる程度の。

 機械によく付いている、爪楊枝などで押すリセットボタンをそのまま大きくしたようなものだ。

 それを押してやれば、エイダの背中の装甲が勝手に開いていき、中で体を固定しているロックが外れる。

 そうすればようやく自由だ。

 

「はぁ、はぁ……い、一生出られないかと思った……」

「ご、ごめんねぇ、燕谷さん……」

「ううん……エマージェンシーボタンの事を教えておかなかったあたしが悪かったから……」


 中から出てきたのは女の子だった。

 燕谷。今になって思いだしたが、彼女は新生エイダバトル部の部長だ。

 新生エイダバトル部の部長が同じ一年で、その名字が燕谷だった、という事をちょっと前に聞いたことがある。

 息を切らしているボブカットの少女は美少女と言っても過言ではない。七海と一緒にいるととても映える。

 ありがとう世界。女の子同士の絡みは男にとって、とても綺麗な物に見えます。

 二人が並んで立つと、ちょっとだけ燕谷の方が身長が高く見える。体型には触れない。エイダの中で焦って汗をかいていたからか、彼女が着ている体操服がちょっと体に張り付いている。

 強いて言うなら、あまりデカくはない。服の上からはちょっと分からない。

 

「八紘お前ぇ!! 俺を置いてくなぁ!!」

「あ、九朗。ようやく来たか」

「ようやく来たか、じゃねぇよ! お前足はえぇんだよ! 万年帰宅部なのにどうなってんだよ!!」


 丁度その時になって九朗がやってきた。

 鞄片手に必死になって走ってきた。

 

「九朗も来たところで、七海。何があったんだ? お前がエイダバトル部の部長と一緒なんて」

「え、えっと……実はわたし、部活作る時に名前だけ貸してて……」

「あ、そうなの?」

「うん。そうなんだけど……今日はエイダを動かすから手伝ってって言われちゃって。ほら、わたしも部員だし断れないじゃん?」

「あー、まぁ、せやな? 名前貸した以上はある程度の責任もあるしな」

「そゆこと。で、その結果が……」

「中から閉じ込められた、と。燕谷とやら、お前なにしたんだ?」


 エイダを見て溜め息を吐いている少女、燕谷に八紘は声をかける。

 燕谷はその声に言葉を詰まらせたが、すぐに口を開いた。

 

「その……アタッチメントを取り付けたから内部のプログラムの値も弄った。デバッグしたときは大丈夫だったけど、実際に動かしたらソフトが落ちた……一瞬見えたウィンドウからして、実機との整合性が取れない事が原因の例外のせいかな……」

「あー……まぁ、ありがち、らしいな。そういう時のために七海を連れてったんだろうが、連れてくんならせめてエマージェンシーボタンの位置くらい教えておけ」

「うぅ……言い返せない……」


 こういう話はそこそこある話だ。

 そういう時のためにエイダを試しに動かすときは誰か一人、エマージェンシーボタンを押せる人間を連れて行くものなのだが、エマージェンシーボタンの存在を知らない人間を連れて行ったところで意味はない。

 まぁ、今どきなら通行人とか近くの人に助けを求めれば済む話だが。

 

「あれだな。ちょっと落ち着いてエマージェンシーボタンの位置を教えるべきだったな。という事でこの話はこれまでだ。俺も説教紛いの事は言いたくない」


 実際、こういう話は本当にそこそこあるのだ。

 だから今更八紘が言ったところで変わらないし、こういう失敗は経験してこそだ。

 ここで失敗したからこそ、次は対策を打ち、失敗しない。人間とはそういう生き物だと八紘は考えている。

 

「……ねぇ、楠。この子誰?」

「えっと、こっちの助けてくれたのがやっくん。で、隣の人は……誰?」

「1-Bの西村だ。で、おい。八紘。どっちがお前の彼女?」

「ちがわい。こっちの可愛いのが楠七海。1-Dらしい。で、こっちは……なんだこのちんちくりん。人に名乗らせるんならまず名乗れよ。ちなみに俺は1-Bの東八紘な」

「勝手に名乗って名乗らせる暇をようやく与えたのはそっちでしょ!!? あたしは燕谷十華、エイダバトル部の部長! ってかサラッとクソ失礼なこと言わなかった!!?」

「キノセーキノセー」


 早速のアレな十華の扱いに七海と九朗が苦笑する。

 八紘ははいはい、と十華の話を受け流すが、対する十華は東八紘? と首を傾げた。

 そして直後。

 

「あっ、もしかしてあんた、あの東八紘!? エイダバトル全国大会の小学生の部で圧勝してた、あの!」

「……そうだけど」

「先生に入部してくれるように声をかけてくれって言ったのに! なんで断ったの!?」

「人には色々とあんの。だろ、七海、九朗」

「う、うん……こればっかりはちょっとやっくんの言うとおりかな」

「俺も同感。人には事情があるからな」


 事情通の2人は八紘の言葉に頷いた。

 とは言え、八紘がどうしてエイダバトルを辞めたのか、という詳細な理由は知らない。知らないが、そこまでの結果を残して辞めたのなら相応の理由があるのだと理解はしている。

 だからこそ、詳細こそ触れないが、これ以上八紘は何も言わなかった。



****



 あとがきになります。

 大事な事なので触れておきます。

 七海と十華は合法ロリな体型です。デカくないです、小さいです。

 何故かって? 私の趣味です。前作もそうだったしネ。

 あと、ハーレムは無いです。タグ付いてないヨ

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