【おまけ漆】 また寝取られる……!?

 なぜか電話が繋がらない。

 ……おい、ウソだろ。


 やっぱり、小雨さんの身になにか起きたんじゃ……!

 急いで小雨さんの家へ戻る。


 たどり着いて早々、俺はチャイムを押した。



 ――いや、まて。



 玄関の扉が僅かに開いているような……。

 ま、まさか既に誰か侵入済みなんじゃ……! 情報が確かならマズい。こうなったら、小雨さんには悪いんだけど、あがらせてもらう。



「ごめん。お邪魔します……!」



 扉を開けると、そこには見知らぬ靴があった。小雨さんと共に来た時にはなかった靴だ。……こ、これは!


 もう遅かったのか。

 また寝取られる……!?


 そんなのウソだ、ウソだ、ウソだ!!


 いや、冷静になれ俺。まだ間に合うかもしれない。

 急いでリビングへ向かうが、小雨さんの姿はなかった。いないか。


 他の部屋にも気配はない。 

 となると、二階か?


 しかし、小雨さんの安全の為とはいえ……申し訳ないというか、下手すれば通報されかねない状況だ。だが、連絡が取れないのだから仕方ない。

 それに小雨さんは独り暮らし。

 万が一があれば大変だ。


 状況が状況なので、きっと許してくれるさ。



 なので俺は二階も探ったが、それらしい気配はなかった。……なんだ、誰もいないじゃないか。いや、小雨さんはどこへ行ったんだ?


 一階へ戻り、俺はふと風呂の方が気になった。



 ……そこにいるのか?



 視線を向けた瞬間、扉が『ガラッ』と開いて――そこには、ほぼ全裸の小雨さんの姿が――湯気で肝心な部分は見えなかったけど、うん、やっぱりほぼ全裸だ。



「…………え。霜くん……なんで」


「…………えっと、その、スマン……」



 そ、そうか……小雨さん、お風呂に入っていただけだったんだ。




「ちょ、いやあああああああああああ…………!」




 さすがの小雨さんも悲鳴を上げた。やっべえ、これでは俺がヘンタイじゃないかっ!



「ご、ごめん! 不穏な情報が入っていたから」

「あ、あとで聞くから!! 今はあっち行ってて!」



 そ、それもそうだ。これ以上は俺の心臓的にもマズい。


 リビングの奥へ逃げ、しばらく待った。……てか、あの靴はなんだったんだ? あとで聞いてみるか。



 少しすると、可愛らしい私服姿の小雨さんが現れた。ちょっと怒った顔で。……だよなぁ。


 俺は直ぐに土下座した。



「す、すまん!! 俺は心配になって……それで……」

「わ、分かってるよ。霜くんがそんな人じゃないって……あたしを守る為だったんだよね」


「そうだ。親父と安曇さんの情報によれば、溝口の妹がストーキングしているようだ」

「そうなの!? ……それで来てくれたんだ」

「……ごめん、急に」

「いいのいいの。気にしないで」


 よかった、小雨さんは怒っていない。むしろ、嬉しそうにしていた。一人で心細かったとさえ言ってくれた。ので、俺は安心した。

 下手すりゃ俺が捕まっていたし、人生終わっていた可能性の方があった。だけど、ここまで積み上げてきた“信頼”が実を結んだ。もともと小雨さんは俺に好意的でもあったけど。



「そ、その……よければ、しばらく一緒にいようか」

「ほんと! それか、泊まる?」


「マジ!」

「うん、いいよ。霜くんの親がよければだけど」

「親父なら気にする必要はないな。じゃあ、オッケーってことで」


「やった! 男の子を家に泊めるなんて初めてだよ~」



 そうなんだ。はじめてが俺だなんて嬉しいな。


 というわけで俺はまさかの小雨さんの家で一泊することになった。おかげで守りやすくなったし、俺としても好ましい状況だ。


 好きな人の家にいられるなんて夢のようだ――。

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