(7)

 目的地のドラゴンが住む山までは、何事もなく辿り着いた。

 しかし、問題はここからだ。

「何か……今……結界みたいなモノを……その……」

 僧侶のジブリルがそう言った。

「あたしも確かに感じた……」

 魔法使いのアイーシャも同じような事を言い出す。

「ここから先は……どんな事が有っても動物を殺さないで下さい。もし殺せば……」

 グルルル……。

 聖女騎士様が言い終る前に、藪の中から、如何にもな猛獣の鳴声。

「敵意剥き出しみたいだけど……」

「絶対に殺さないで下さい。人間が『友達』を殺せば、この山の主のドラゴンさん達は、町を滅ぼします」

「い……いや……でも……」

 グルルル……。

 グルルル……。

 グルルル……。

 鳴声は複数。

「何が有っても殺さないでッ‼」

 俺はクロスボウを手にする。

「いや、殺されなきゃ、俺達が殺され……」

 その瞬間……。

 藪の中から次々と獣が飛び出す。

 山猫。

 狼。

 虎。

 熊。

 それらが……俺達……目掛け……俺達……俺達……。

 待てッ‼

 何で、全部、俺に向かって来るッ⁉

 もう、どうなろうと知った事かッ‼

 町が滅ぶなら、俺だけ逃げりゃいいだけだッ‼

 俺は、まず、右前方から迫って来た狼に向かって……クロスボウを放ち……。

 ガンッ‼

 クロスボウの矢は見えない何かにぶつかり……あっさり砕け……あれ?

 何故か、俺にだけ向かって来た獣どもも……唖然としている。

 いや、獣の唖然とした様子ってのも説明しにくいが……ともかく、唖然としてるように見える様子だ。

 そして……。

 熊が首をかしげながら、俺に近付き……。

 流石に、俺が乗ってる馬はパニックになり……。

 おい……。

 みんな……どこ行った?

 マズい……俺を見捨てて……自分らだけ逃げやが……。

 ガンッ‼

 パニックになった馬が走り出した瞬間……とんでもない衝撃。

 俺は馬から放り出され……。

 ガンッ‼

 今度は、俺の体に衝撃。

 痛い。

 痛い。

 痛い。

 高い所から落ちて地面に叩き付けられたような痛み。

 いや……実際、地面に落ちてるけど……。

 でも……俺の体は、空中で目に見えない壁みたいなモノにぶつかった……ような気がする。

 そして……気は失なっていないが……痛みでマトモに動け……動け……。

 あ……熊のブッ太いとい後ろ足が目の前に……。

 こ……殺さ……。

 コン……コン……コン……。

 熊は……どうやら……何かを前足で叩いてるらしい。

 俺と熊の間に有る……目に見えない壁のようなモノを……。

 どうやら……俺と馬は……目に見えない壁みて〜なナニかに閉じ込められ……。

 ガシッ‼

 その時、ピンク色の鱗だらけの腕が、熊を背後から締め上げ……。

 た……たすかった……あのクロちゃんの許婚だか何だかだけは……俺を見捨ててなかっ……。

「熊さん、かわいいのだ♥ だっこしていいですか? なのだ♥」

 はぁ?

「あのさ……」

 その時、逃げ出したと思ったアイーシャの声……。

「何か……この辺りの動物達さ……リーダーだけを『邪悪な人間』だと見做してるみたい……」

 えっ?

 いや……ちょっと待て……。

 何で俺だけッ?

「虎さんも、かわいいのだ♥ なでなでしていいですか? なのだ♥」

「くぅ〜ん♥」

 何故か……虎は……甘えたような声をあげた。

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