第1話-2 寝取られ、そして異世界へ

 今思うとロクでもない人生だったな。何もしていないのにクラスの女子には嫌われ煙たげられていた。それでもいつもひよりだけは俺の味方でいてくれた。それなのに‥‥‥




 ふと目を開くと、俺は見知らぬ土地に倒れていた。


「どこだ?ここ。」


 ただ一つ分かるのは、あぁ俺、死ねなかったんだ。ということのみ。あの濁流に流されて何処かに辿り着いてしまった。


 何の情報も無いため、取り敢えず周りを見渡す。どうやら俺は森の中にいるらしい。だが自生している植物はどれもが見たことのないものだ。となると、ここは日本じゃない?などと考えていると、草むらがガサガサと動く。その中から角の生えた赤い狼が飛び出した。


「へあ?!何だこいつ!?」


 こんな生き物、見たことない。まるで別世界に迷い込んだみたいだ。でも、こいつなら俺を殺してくれる。もう疲れた、終わりにしよう‥‥。


 狼が俺を狩る為に走る。その時、


「せーいっ!やーーーっ!!」


 と、横から大剣を持った女性が手に持つ剣を振り、狼を斬首した。そのまま身体を崩し、辺りには頭部が転がっている。


「大丈夫!?怪我は‥‥‥男‥‥?」


 彼女が俺の心配をする途中で絶句している。はぁ、またこれか。何で俺はここまで女に嫌われるんだ!


「何で死なせてくれなかったんだ!お前が‥‥お前が来たせいで‥‥!!」


 そう言った瞬間、目の前が真っ暗になる。何が起きているんだ。それに、顔に当たるこの柔らかい感触は‥‥‥。


「そんな事、言わないで下さい!!」


 頭の上から彼女の声がした。そうか、今俺は彼女に抱きしめられているのか。そして今目を塞いでいるものは‥‥‥


「どんな辛い事があったのかは分かりませんが、自分を投げ出すなんてしてはダメです!」


「そんな事言ったって俺が死んで悲しむ奴なんて誰1人いねえよ!」


「そんな事ない!だって‥‥私が悲しい!だから、そんな事言わないで!」


 見ず知らずの彼女にそこまで叱られるなんて、俺の事をそんな風に思ってくれるのが堪らなく嬉しかった。たとえそれが演技だとしてもそれにすがり付きたいほどに心が壊れていたのだ。


 時間が経って心が落ち着いた頃、俺は彼女を見つめる。互いに徐々に顔を近づけ、彼女と唇を重ねた。ファーストキスは切なくも、慈愛に満ちたものとなった。

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