君と紡ぐ四季

ちょっと変な人

第1話 出会いの春

春川蓮は、新しい制服に身を包み、緊張した面持ちで校門をくぐった。


転校生としての初日――胸の奥には期待よりも不安が入り混じり、足取りは自然と重い。


教室に入ると、数名の生徒が席についており、視線が一斉に自分に向かう。

蓮は深呼吸をして自己紹介に臨んだ。


「はじめまして、春川蓮です。よろしくお願いします」


その言葉に、教室の空気がわずかに柔らいだ。


隣の席の少女が笑顔で手を振った。


「私は桜井美桜。よろしくね」


高校生活の始まりはぎこちないが、美桜の明るい笑顔が心を和ませる。


昼休み、窓から差し込む春の陽光と舞い散る桜の花びらが教室を照らす。

蓮は机に肘をつき、心の中でつぶやく――この学校でやっていけるだろうか。


休み時間、美桜とすれ違う。


「また明日ね、蓮くん」

「うん、また明日」


放課後、図書室で静かに本をめくりながら、新しい日常を想像する蓮。

美桜がそっと隣に座り、「蓮くん、勉強苦手?」と聞く。


笑い合いながら会話を重ねるうち、蓮は思う――この人となら高校生活も悪くないかもしれない。


春の光と桜の香りに包まれた初日、蓮の新しい日常が静かに始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る